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連載小説

自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(1)

第1章    「若人海を渡る」      一九四五年八月十五日、天皇陛下の玉音放送、「耐え難きを耐え」「忍び難きを忍び」との鶴の一声をもって、大東亜戦争が終戦とあいなりました。その日こそ、真実、国民には春が来たと表現すべきかもしれない。この小説の主人公「千年太郎」(ちとせ・たろう)も、作者「筑紫橘郎」(ちくし・きつろう)も同年代 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(49)

「リカルドは、誰かさんと違って、家族の愛情に恵まれて育っただけ幸せだよ」「木村社長は、相変わらず金儲けに忙しいのでしょうか? 死んだカロリーナがあの人に残したメッセージのことは忘れたのかな・・・」「忘れてないよ。結局、人生で一番大切なのは、金とか社会的な地位がなくなっても、最後に自分に残るものじゃないか。どんな時でも自分を愛して ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(48)

 人数が増えたので、別のテーブルに移動して、全員ゆったりと着席。オーダーはシュラスコ食べ放題のコースと決めていたので、それぞれ飲み物を注文し、再会を祝して乾杯した。「今日は、ご招待ありがとうございます。彼、日曜日はいつも東京に踊りに来るので、一緒に来ようということになって、ついでにアドリアーナも連れてきました」「そりゃよかった。 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(47)

「私がこんなことを言うのも何ですが、今回、仕事でいろいろお話をお伺いして思ったんですが、社長には、誰か心の支えになってくれる人が必要じゃないですか? それは、家族、友人、あるいは恋人かもしれませんが、身近にいて、社長のことを本当に愛して考えてくれるような人ですよ。私、社長より長く生きてきてようやく分かったんですが、そういう人間っ ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(46)

 酒とクスリの相乗作用で完全に盛り上がった二人は、疲れを知らずに踊りまくり、カロリーナは群馬のアパートに帰ることをすっかり忘れてしまった。「二人ともたっぷり汗をかいたところで、外の新鮮な空気を吸いたくなってディスコから出ました」「それから?」「二人で腕を組んで、六本木の街をさまよいました。どこをどう歩いたのかよく覚えていませんが ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(45)

 リカルドが、また興奮して話し出した。「社長は、自分の都合で婚約者を捨てたのでしょう? もう何の役にも立たないと思って。カロリーナを捨てた時と同じだ。政治家の娘なら利用価値があるけど、ただのオヤジの娘じゃ、あなたにとって何のメリットもないですよね」「いや・・・それはちょっと違います。正直に言うと、私自身は、先生の後ろ盾に期待して ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(45)

 リカルドが、また興奮して話し出した。「社長は、自分の都合で婚約者を捨てたのでしょう? もう何の役にも立たないと思って。カロリーナを捨てた時と同じだ。政治家の娘なら利用価値があるけど、ただのオヤジの娘じゃ、あなたにとって何のメリットもないですよね」「いや・・・それはちょっと違います。正直に言うと、私自身は、先生の後ろ盾に期待して ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(44)

「お互い久しぶりに会われて、話したいことがたくさんあったでしょう」「ええ、まあ。でも、話題の中心はこれでした」 木村社長は、ジャケットの内ポケットから折りたたんだ書類と一枚の写真を取り出して、私とリカルドに見せた。「例の出生証明書のオリジナルですよ!」と、リカルドが驚きながら言った。「この出生証明書の父親の欄は空白なので、カロリ ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(43)

「帰国後しばらくすると、南米が懐かしくなりました。スケールの大きさだけでなく、向こうの連中のうらやましいところは、いつも人生を楽しく生きて行こうという姿勢で、地球の裏側から来た私のような外国人でも、一人の人間として受け入れてくれるような心の豊かさをもっていることです。日本は経済大国とか言っても、そこに住んでいる人間は、いつも何か ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(42)

「前の日は、子供の誕生日で、電話で元気そうな声を聞いて、どうしても父親を探さなければと思ったんですよ」 リカルドから「子供」という言葉を聞かされて、木村社長はまたうろたえたが、とりあえず話を続けてもらった。「で、カロリーナさんは東京のどこに来られたんですか?」「まず、私が前に住んでいた大久保のぼろアパートに行って、もう私が住んで ...

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