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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)

「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(40)

「じゃ、今度会われたら、よろしくお伝えください。キムラさん、大久保にいたころはよく来てくれましたが、西新宿に引っ越してからは、あまり来てくれませんよ。最後に来たのは、もう1年以上前かな。まあ、偉くなって忙しいし、住む世界が違うから、もうこんな店、来れないかもしれませんね」「キムラさん、外人の彼女とはうまくやってたんですか?」「い ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(39)

「そりゃ、たぶん嘘じゃないよ。偽装結婚した時はともかく、日本に来てからは、カロリーナも君のことを、本当の夫みたいに頼りにしてたと思うよ。たぶん、彼女は、君みたいな男と『正式に』結婚して、できれば子供も産んで、平凡でもいいから家族が仲良く暮らす家庭を作りたかったんじゃないか。今、日曜日に一緒に料理をして楽しかったって言ったよね。私 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(38)

「外人の女の体は、そんなものだと思ったの?」「いいえ、実はすごく興奮してたので、妻の体の細かい部分までは覚えてません。普通外人の女は、子供を生んだ後はすごく太りますが、彼女の体は仕事帰りに運動をしているせいか、引き締まってましたし・・・。あっ、そう言えば、彼女と一緒になった時、それまで経験したことがないような・・・何か母親的な癒 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(37)

「まあ、あまり驚かないでくれよ」 私が、「エル・パライーソ」で法外な料金と引き換えに得た情報を、要約しながら話している間、リカルドは、もくもくとシュラスコを食べながら黙って聞いていた。「で、現時点での私の推測だが・・・」 シュラスコで一杯になったリカルドの口の動きが止まった。「君が結婚したのは、きっと、アナと名乗っていたカロリー ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(36)

 かわいい笑顔とすらりと伸びた手足は、健康的で爽やかなイメージそのもの。この年頃の女の子は、こうじゃなくちゃいけない。この間、渋谷の街で見た、やけに短いスカートをはき、パンツを見せながら地べたに座っていた、不健康で退廃的なイメージの日本の女子高生たちとは大違いだ。 続いて、ガロータの両親に挨拶。初めて会っただけで、子供の教育とし ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(35)

「いやー、実にタイミングがいいよ。今、例の移住100周年の準備会合の会場にいるんだが、たまたま、お隣のパラナ州から来てる奴が、その有機農業協会とかいうとこの理事をしてるって言うんで、聞いてみたよ。木村さんのことは知ってた。それから、アナ・バロスという女。その協会の職員だったそうだ。今年の6月に辞めて、今、サンパウロにいるらしい。 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(34)

 前の晩に巨額の投資をして入手した情報をきっかけに、私の頭の中で、サンパウロと群馬と新宿が、何となく一本の線でつながった。六本木とつながる線については、もうあの男に直接聞くしかないのかなと思った。 そんなことを考えているうちに、午後3時を過ぎ、今度は、リカルド田中がケータイにかけてきた。職場は休憩時間に入ったらしい。「こんにちは ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(33)

 新聞を読みながら、一人ゆったりした気分でランチを楽しみ、デザートのティラミスを食べて、最後にエスプレッソコーヒーを味わっていると、午後1時を過ぎた。次は、あの男に「追加取材」だ。 木村屋コーヒーに電話すると、運よく社長は在席中で、すぐにつないでもらえた。「急にすみません・・・」「いえいえ、お気になさらず。どうされました」「実は ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(32)

 思い切って早起きして、『強制送還』というキーワードでネットサーフィンすると、入国管理局のホームページにたどり着いた。『法務省入国管理局では、“ルールを守って国際化”を合い言葉に出入国管理行政を通じて日本と世界を結び、人々の国際的な交流の円滑化を図るとともに、我が国にとって好ましくない外国人を強制的に国外に退去させることにより、 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(31)

「外人」のハンディがありながら、わざわざこの店まで来た甲斐があったと思った瞬間、カラスが持ってきた紙切れに手書きされた、内訳なしの請求額を見てぶったまげた。なんと、この時間のセット料金よりゼロが二つ多い。 やはり、最低料金で目いっぱい楽しむ「外人」は、遊びに関しては、日本人よりはるかに賢い。 賃貸マンションが生み出すあぶく銭をど ...

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