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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて

平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(8)最終回=戦前戦後の区切りを超え=連綿と続く自由渡航の波

9月13日(土)  ここ十数年でブラジルに移り住んだ日本人七人に話を聞き終えたところで、「移民区分のなかで、彼らをどう位置づければいいだろう」との疑問が寄せられた。国策でやって来たわけではない。しかも、ブラジルから日本へデカセギ労働者が流れるという世界経済の状況下で、わざわざ日本からブラジルへ来た人たち。よく耳にする戦前、戦後移 ...

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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(7)=「美術史に残る作品を」=夢を見させてくれる場所

9月12日(金)  「サンパウロでは、たくさんの夢を見させてもらっている」と話す吉沢太さん(三九、埼玉県出身)は現代造形作家。大学でテキスタイルデザイン(織物)を学んだ後、ファイバーアート(繊維美術)の世界にのめり込んだ。日本で美術運送などのアルバイトをしながら、作品を制作していた太さんに、九四年六月、ある転機が訪れた。  世界 ...

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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(6)=身重で単身渡伯し出産=一見型破り、でも自然体

9月11日(木)  「思い立ってブラジルに来ました」――。村本清美さん(四五、愛知県出身)はくったくがない。日本の大学を卒業、しばらく都市計画関連の仕事に就いた後、一九八六年から九一年まで、サンパウロ大学大学院で建築都市計画を研究した経歴を持つ。九年前に再び来伯、現在、日本政府の外郭団体に勤務しながら、リベルダーデ区の自宅で一人 ...

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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(5)=大学卒業し通訳翻訳業=日系妻との二人三脚人生

9月10日(水)  在伯通算十六年になる神戸保さん(三九、愛知県出身)は毎日、働きづくめで休む暇がない。「子どもができると、何も考えずに働いている。好きなこと言っている場合じゃないよね」。昼間は翻訳、通訳業で飛び回り、夜はリベルダーデ区トマス・ゴンザーガ街のカラオケ食堂「ポルケー・シン」を切り盛りしている。「最近、日本から来た職 ...

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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(4)=韓国移民と結婚し渡伯=ボンレチーロでビーズ刺繍

9月9日(火)  「あら、ここのデザイン、ちょっと間違っているわね」。  「大変! もう一度、ほどいて縫い直さなきゃ」。  ボン・レチーロ区、あるアパートの一室での会話だ。  栗木圭子さん(四八、大阪府出身)は、自宅でパーティー用婦人服のビーズ刺しゅうで収入を得ている。  圭子さんは大学で社会福祉を専攻、その後も同分野で働いてい ...

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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(2)=「義父(安立仙一さん)に守られてきた」=日系社会と向き合う決意

9月5日(金)  「これまでは義父に守られてきた。でも、これからは、一人一人と向き合って、きちんと関係を築かなくては」――。サンパウロ市アクリマソン区在住、山崎和樹さん(二八、埼玉県出身)は深い悲しみの中から、ようやく頭を持ち上げた。義父、安立仙一さんが八月十五日、七十二歳で亡くなった。生前、文協事務局長を務めた仙一さんの家族宛 ...

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平成の自由渡航者たち=運命の出会いに翻ろうされて(1)=「そのまま居つきたい」=日本人と日系人の溝を越え

9月4日(木)  デカセギ労働が定着した近年、二十七万の日系人が日本に滞在しているが、現代の流れに逆らうかのように、ここ十数年間でブラジルに定住した日本人がいる。今年六月、外務省発表の統計によると、昨年度のブラジル内の日本人長期滞在者、永住者は計七万二千三百四十三人。戦前、戦後の、どの移民区分にも属さない日本人は、なぜ来伯し、何 ...

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