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特別寄稿=私のモラエス=「サウダーデ」を巡る移民側からの随想=中田みちよ

 1899年から14年間、神戸の在日ポルトガル領事館の総領事などを務めたヴェンセスラウ・デ・モラエス(リスボン生れ、1854―1929年)は軍人、文筆家としても知られる。著書には『おヨネとコハル』『日本精神』『徳島日記』などがあり、芸者おヨネと共に暮らし、彼女の死後は職を辞して、ヨネの故郷である徳島市に移住。ヨネの姪であるコハルと暮らすが、やはり先立たれる。徳島ではスパイの嫌疑をかけられ、「西洋乞食」とさげすまれたこともあり孤独のまま同地で亡くなった。作家・新田次郎の絶筆はこのモラエスを取り上げた小説『孤愁 サウダーデ』だった。その次男で数学者の藤原正彦が父の取材の道筋を追体験し『父の旅 私の旅』として出版した。そんなモラエスに惹かれた中田みちよさんが今年わざわざポルトガルを訪れ、モラエス足跡を辿り随筆を寄稿したので、ここに掲載する。(編集部)

特別寄稿=私のモラエス=「サウダーデ」を巡る移民側からの随想=中田みちよ=(下)

ニッケイ新聞 2011年7月15日付け  99年の講演会以来、ポルトガルは長い間、私の夢であった。2011年4月の末、とうとう、そのモラエスのポルトガルに行ってきた。いまも残されているという生家を訪ねるためである。  藤原正彦の『父の旅・私の旅』や『地球の歩き方(ポルトガル篇)』にはリスボンにはラルゴ・ダ・アヌンシアダ広場近くに ...

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特別寄稿=」私のモラエス=「サウダーデ」を巡る移民側からの随想=中田みちよ=(中)

ニッケイ新聞 2011年7月14日付け  「・・・(前略)この通り(作者註・伊賀町)は、この町の一方の端から他方の端へと走って内陸部から市街地を区切る天然の境界をなしている小山のすぐ近くにあり、この小山のすそを巡っている徳島は、実際、時をへて黒ずんだ木と黒い屋根瓦でできた家がごちゃごちゃと帯のように細長く立ち並ぶ、山と平地の間に ...

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特別寄稿=私のモラエス=「サウダーデ」を巡る移民側からの随想=中田みちよ=(上)

ニッケイ新聞 2011年7月13日付け  1899年から14年間、神戸の在日ポルトガル領事館の総領事などを務めたヴェンセスラウ・デ・モラエス(リスボン生れ、1854—1929年)は軍人、文筆家としても知られる。著書には『おヨネとコハル』『日本精神』『徳島日記』などがあり、芸者おヨネと共に暮らし、彼女の死後は職を辞して、ヨネの故郷 ...

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