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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話

国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=最終回=現場に必要なのは責任感=ブラジル社会に溶け込んだ人生

 30年前の1982年11月5日正午、ブラジル大統領ジョアン・フィゲレード、パラグアイ大統領アルフレッド・ストロエスネルが完成したばかりの堤体の頂上部を両国側から歩み寄り、そぼ降る雨の中を水門の始動ボタンを押すイナウグラソンを行なった。特別に仮設された観覧席には5千人が集まっていた。  ジョルナル・ド・ブラジルによれば、パラグア ...

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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=第6回=「まだ帰っちゃいかん」=新たな特命、ダム本体も

 ドゥーーン。腹に響く爆破音が現場に響いた。仮排水路の上流側と下流側の入り口の壁を爆破した音だ。すごい勢いで水が入り込み、一気に20メートルの高さまで水位が上昇した。おかげで浚渫船が激流に流されて沈没するという予想外の事態が起きたほどだった。  雨期開始寸前の10月14日、無事にイナウグラソンにこぎつけた。世界の建設業界から「ブ ...

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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=第5回=「あれしかない」秘策考案=世界初のスライド型枠工法

 〃8人のサムライ〃の先陣となった二人がイタイプーの現場に呼ばれたのが78年4月。この時点で工事の進捗状況はわずか5%。それから雨季が始まる10月までに仮排水路を完成させろという不可能に近い特命だった。荒木は当時41歳、袋崎は33歳だった。  「仮排水路」といっても深さ30メートル、幅約300メートルもあり、「仮」とはいえ、これ ...

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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=第4回=国家の命運掛けた大工事=植木動力大臣が特別任命

 日本の高度経済成長は1955年から石油ショックが起きた73年まで20年近く続いたが、ブラジルでは68年から73年までの5年間だった。年率10%以上の経済成長を記録したその期間を〃ブラジルの奇跡〃と呼ぶ。  これを反映して日本企業だけを見ても72年の52社を先頭に73年には98社、74年に78社、75年には60社とわずか4年間で ...

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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=第3回=世界最大の発電能力誇る=最後発世代と軍事政権

 2009年11月10日夜10時13分、イタイプーダムの送電設備に端を発する大停電が起き、パラナ州とサンパウロ州を中心とする18州、実にブラジル全土の3割に相当する地域への電力供給が止まったことは記憶に新しい。これはブラジル史上2番目に大規模な停電として歴史に残った。つまり、イタイプーが止まればブラジルも止まる。  このダムはパ ...

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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=第2回=「男の仕事」求めて渡伯=測量ミス発見し有名に

 荒木昭次郎(74、山形、青年隊9期)=ミナス州ベロ・オリゾンテ在住=は、56年に山形工業学校土木科を卒業し、上京して建設会社で働いた。いわゆる戦後の「金の卵」世代だ。  日本で食えなかったわけではない。むしろ景気は右肩上がりの高度経済成長に突入していた。ただ、自社の営業部員が連日、談合や接待に明け暮れている様子を横目に見て、そ ...

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国家事業救った8人の侍=知られざる戦後移民秘話=第1回=“イタイプーのSWAT(スワット)”=山根一眞が週刊誌で紹介

 30年前の1982年、イタイプーダムは静かに貯水湖へ水を湛えはじめた。以来、世界最大の名をほしいままにしてきたブラジルが誇る巨大建造物に、戦後移民の〃8人のサムライ〃が重要な役割を果たしていたことは、『ブラジル日本移民80年史』や『戦後移住の50年』にすら書かれておらず、事実上、南米産業開発青年隊(以下、青年隊)の内部でしか知 ...

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