3世を信じ任せるー網野前県連会長が提言

 ブラジル日本都道府県人会連合会の網野弥太郎前会長(六三)は一九九八年、初めてふるさと祭りを開いて成功させた。以後、祭りは年々盛んになっている。若い日系二、三世を巻き込んで実行に移したことが成功の原因だ。十万、二十万人単位のブラジル人がサンパウロ市イビラプエラ公園の会場に足を運んだ。大盛況裏に終わった二十世紀末最後のこの企画は、二十一世紀の日系団体の活動、運営の方向性を示す指針と注目された。
 網野さんは、「新世紀を迎えた日系諸団体はペルーやメキシコの日系人協会のような形に統廃合されていくべきだ。そのためには若い日系三世の台頭を待たなければならない。三世の台頭を早め、その活動を容易にするためには、コロニアの一世、二世は全力を投じてその環境を整える必要がある」と提言する。
 網野さんが提言する日系人協会は、文化、福祉、日本語教育などの各部門の団体が統合されたものだ。網野さんは、「県連が創立されたときには十七の県人会しか県連に入会しなかった。三台目会長のときようやく三十二県になり、四代目の藤井卓治会長の代になって初めて四十六都道府県が出そろった」と組織、団体が連合、協調していくことの難しさを強調する。
 網野さんは団体が一緒になるには、「歴史のしがらみから解放されなければならない」と訴える。「子供の園の理事をしていたとき各福祉団体は《うちは仏教系だから》、《うちはキリスト教系だから》と自己主張ばかりして、まとまることがなかった。福祉団体ですらそうなのだから、文化団体がまとまることなどほとんど至難の技。団体が連合、統合するには過去を忘れなければならない。そういう意味でも団体の歴史を知らない、歴史から自由な三世の台頭に期待したい」と、自らの経験を例に挙げて主張する。ひとたび三世に譲ったら、後は信じて任す。一世の仕事は後継者のために環境を整え、体制を作ることだ。
 老齢化した一、二世は、えてして過去の経験則にのみ頼りがちで、応用が利かず斬新な発想ができない。進化論で鳥類とほ乳類の中間に位置するといわれるカモノハシは、既に経験した事態に対しては素早く反応する。だが初めてのことだとどう対応していいのか分からなくなり動きが鈍くなり、静止してしまう。文協は一九九六年に日伯学園建設を構想、日伯両国の首脳から建設を委託された形になった。にもかかわらず、行動を停止してしまった。文協は今日に至るまで沈黙したままだ。
 網野さんは、日系団体の統合の必要性を選挙を例に挙げて訴える。コロニアと関係あるところでは日本の在外選挙、ブラジルの全国統一市長市議選挙があった。先ごろ行われたアメリカの大統領選挙の開票結果は、「一票の重みがいかに重いか」考えさせてくれた。網野さんは、「在外選挙のキャンペーンを張ったのは県連だけ。もし文協、援協が行動をともにしてくれていたら四万票は取れた」と残念がる。サンパウロ市議会の日系候補は一人を除いて全滅だった。これも日系人のまとまりの悪さを物語るものだ。