婦人対象に安全講習会=総領事館初の女性向け企画=増える家族の誘拐

1月21日(火)

 サンパウロ総領事館(赤阪清隆総領事)は『当地在留の夫人方に対する安全講習会』を十七日午後二時から、在サンパウロ総領事館三階ホールで開いた。駐在員夫人たち約八十人が参加した。総領事館が女性を主な対象とした安全講習会を開くのは今回が始めてとなる。昨年発行した「安全対策マニュアル」を配布し、警備担当の高橋靖夫領事がサンパウロの治安情勢や安全対策について説明した。

 赤阪総領事はあいさつの中で「サンパウロの治安状況の改善は顕著ではない」とし、日本とブラジルの犯罪件数などのデータを挙げながら、事件に備え「家族内で事件に巻き込まれたときの対応などを話し合うことが必要」などと話した。
 渡辺英明商工会議所安全対策チームリーダーは、「最近の傾向として女性、子供が誘拐されるケースが多い」とした上で「安全セミナーなどに参加し、犯罪の傾向などを把握することが肝要」と強調した。
 警備担当の高橋領事はサンパウロ市及び大都市圏の犯罪発生状況などの推移グラフを挙げて説明。
二十年前に比べて、約四倍になっていることを指摘しながら、治安悪化の主な原因として▽景気の低迷による失業率の増加▽東北伯からの出稼ぎの増加▽リオ州からの犯罪者の流入ーなどを挙げた。
続いて、拘置所内の弾痕の残るドアやファヴェーラでの摘発現場などの生々しい写真を紹介した。
 サンパウロ市及び大都市圏の罪種別犯罪発生状況を殺人、強盗、窃盗などに分け、それぞれの発生状況や態様などの実例を挙げながら説明した。
 サンパウロ州と日本の犯罪発生状況比較として殺人はサンパウロ州が日本の約九・三倍、強盗は約五十倍だとし、窃盗は日本の方がサンパウロの約五・三倍という意外な数字を挙げ、「これは自転車などの窃盗が多いため」などと補足した。
 ■安全対策
 高橋領事は「安全対策上の基本的な心構え」として、▽自分の身は自分で守る▽目立たない▽油断をしないーの三点を挙げた。 
具体的な安全対策として外出時と在宅中における留意事項や点検事項、事件に遭遇した際の対処要領なども併せて紹介した。
 ■誘拐対策
 最近では「女性や子供も誘拐の被害に遭う傾向にある」としながら、九七年に発生した誘拐事件は十四件、昨年には約二十六倍の三百五十五件となっている現状を報告した。
 誘拐事件の約八割は自宅や職場の出入り口で発生し、午前七時から十時、午後五時から八時までに集中している。
曜日でみると、火、水、木に多発しており、身体に危害を加えられるケースは約十パーセントだという。
 被害に遭わないための対策として▽定期的な行動は避ける▽清掃婦や門番などに家族の行動予定を話さない▽夫や子供の出勤、通学、帰宅時は自宅周囲を点検するーなどを挙げ、注意を呼びかけた。事件発生時の対応や人質となった場合の対応なども続いて説明した。
 高橋領事は「女性や子供を対象とした誘拐事件も多発している」ことを受け、家族で常に誘拐事件に巻き込まれた場合の対処方法を検討することの重要さも重ねて強調した。
 昨年末に来伯し、講習会に参加した三十代の女性は「(サンパウロの印象を)日本で聞いていたよりも安全な感じがする」と話しながらも、「講習会で具体的な数字や写真などを見るとやはり気を付けないと」などと気持ちを引き締めていた。