カラオケで働く非日系人=夢は訪日すること=日本人のお年寄りが大好き!

1月22日(水)

 「次は高橋さんに歌っていただきましょう。お願いします」。
 リベルダーデの夜、どこのカラオケからも聞こえる決まり文句かと思いきや、客が歌い終わった後には、「いやー、素晴らしい歌声でしたねー。皆さん大きな拍手をお願いします。次は・・・」と続く。
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 声の主は日本人でも日系人でもなく、日本に行った経験もない非日系の青年、レアンドロ・ナルシーゾ君(二十三歳)。
 夜はトーマス・ゴンザガ街の『カラオケ・ひさえ』で働き、昼はコンピュータの学校へ通う。
 十五歳から、仕事を始めるが、東洋市の盆栽屋台の手伝いを皮切りに日本食レストラン、スーパー、製菓店など常に日本人や日系人経営の店で働いてきた。
 「日本、日本人、大好きですよ。特にお年寄りと話すのが楽しいでしょう。だって色んなことを教えてくれますからねえ」と話す日本語には淀みがない。
 日本の歌は何が好きなの?との問いに歌いだした鶴田浩二の「夜のサンドイッチマン」には驚いた。アイドルは美空ひばり。自宅にはレコードや写真のコレクションが揃う。
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 子供の頃から日本語に親しみを持っていた。というのも母親が『日本語は元気が出る言葉』と常にラジオ・ニッケイを愛聴していたからだ。
 仕事を始めた時期に、日本語の勉強も開始。習ったものをすぐ使える状況でめきめき上達したという。
 カラオケでは日本語をよく使うのかと聞くと、「そんなことないですよ。使うと怒る人もいます」とレアンドロ君。
 一世はレアンドロ君の日本語に感心したり興味を持ったりするのだが、二世、三世から「ここはブラジルだ。ポルトガル語で話せ」と言われたこともある。
 「なんか変ですねー。僕はあの人たちのおじいちゃん、おばあちゃんの言葉を話しているのに。ドイツ語を話しているのではないのですよ」と首をかしげる。
 日本語を使えない二世、三世からすれば、自分よりうまく日本語を話す彼を疎ましく感じるのかもしれない。
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 現在はもっぱら文通を通して日本語に磨きをかけている。「日本人はブラジル人と違って手紙をよく書いてくれるので嬉しい」とのこと。相手は高齢の一世が多いため、文通中に相手が亡くなってしまったことも。高齢者だけに無理のないことかも知れないがレアンドロ君の「非常にもったいないですね。お年寄りは図書館ですから」と老人の知識や経験を惜しむ言葉が印象的だ。
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 夢は日本へ行くことと日本女性と結婚すること。レアンドロ君が一世の老人たちから聞いている『日本』。イメージの中で作り上げている憧れの国『ジャポン』は彼の目にはどう映るのだろうか。