越境する日本文化 マンガ・アニメ(4)=鼻息荒いマンガ出版業界=日系が始めブラジル人が市場拡大

1月24日(金)

 「なぜブラジルでマンガの人気が出てきてるのか? それはJBCのおかげ」とまで言い切るのは、同出版社の出版事業総責任者のジューリオ・モレーノさんだ。
 サンパウロ市ヴィラ・マリアーナ区にあるJBC出版社は、九五年に創業した新興企業だ。九七年に月刊誌『Made in Japan』を、九九年九月からマンガ・アニメ情報誌『Henshin』(変身)を出版しはじめたのをきっかけに、現在ではマンガ市場を席巻する勢いで成長している。
 マンガ市場に参入した九九年、ブラジル国内のバンカでの出版社別書籍売上ランキングで百五十七位だった同社は、最初のマンガ本『Samurai X』(原題『るろうに剣心』)を出版しはじめた〇〇年にはいきなり三十九位に大躍進し、一昨年〇一年には十五位にまでなった。「〇二年はさらに上、十位以内に入るでしょう」とモレーノさんは推測する。
 ここだけで九タイトルのマンガ本を出版。全マンガ市場の半分近い、月七十万冊を供給している。一番の売れ筋は『Samurai X』で出版開始から二年半たった今も、毎月続刊がでる。
 親会社は、九二年に日本でデカセギ向け週刊ポ語新聞「Joranal Tudo Bem」を創刊しており、日本での信用があったことから日本の版元との交渉も比較的スムーズに行き、現在の隆盛にいたる。
 JBCと双璧ともいえるマンガ出版の大手はサンパウロ市アクリマソン区にあるConrad社だ。前者の創業者は日本移民で、非日系の有能な主任スタッフを抱えているのに対し、後者はまったくの非日系企業だ。
 Conrad社は九四年に三人で創業され、当初は音楽情報誌を出版していた。その後マンガ・アニメ情報誌『Heroi』(ヒーロー)が爆発的にヒットしたため、マンガ路線にまっしぐらになり、現在では社員が百人にまで増えた。
 最大の売れ筋は『ドラゴンボール』で十五日ごとに続刊が出版され、各巻六万部が市場に供給されている。二番手が『新世紀エバンゲリオン』で約四万部、続いて『バガボンド』が約二万部だそう。現在は七タイトルだが、すでに来年発行予定の五タイトル分の出版契約が済んでいる。
 なんといっても、マンガ出版事業で最大の転機になったのは、九八年のアニマンガ社による『らんま1/2』の出版だった。それ以前、九〇年初頭には『子連れ狼』『アキラ』などがAbril出版やGlobo出版から出されていたが、いずれも成功せず、途中で打ち切りになっていた。
 まずアニマンガ社が道を拓き、追随したJBC社やConrad社などがマーケティングを駆使して市場を爆発的に拡大させてきた経緯がある。どうやらそこには「日系が始めて、ブラジル人が普及」というパターンが見え隠れしているようだ。
    (深沢正雪記者)

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