猫を尋ねて3000レアル=ミモちゃん奇跡の生還!=警察署で40人もらい泣き

1月31日(金)

 サンパウロ州東部カステロ・ブランコ街道百二十五キロ地点(タツイ市付近)で、五日から消息を絶っていた猫のミモちゃんが二十六日、現場から二キロほど離れたボイツーバ市で地元住民の手によって保護された。脱水症状を起こし、五キロの体重が三キロまで減っていたが、ほかに異状はなく、飼い主のナツミさんによれば、「もう三・五キロまで戻っている」(二十九日現在)。一方、その額が話題を呼んだ懸賞金三千レアルは二十六日、ボイツーバ市警察署長立ち会いのもと、発見者の青年にすでに贈られているという。
 行方不明になって三週間―。だれもが諦めつつあった中で、奇跡は起こった。ナツミさんの必死の捜索活動が実った形だ。「最後まで諦めなくて良かった」。喜びをかみしめながら、そう振り返る。
 十一年間連れ添ったミモちゃんと生き別れとなって以来、ナツミさんは連日のように現場に出向いた。ラジオ、新聞に広告を掲載。近郊の街を訪ね歩いては、「猫捜す」のビラを配って回った。一時は現地に家を借りようとまで考えた。〝一人息子〟の行方を思い、眠れぬ夜が続いた。
 失踪のきっかけは自動車事故だった。ナツミさんは担ぎ込まれた救急車の窓から、街道わきに広がる茂みへと消えていくミモちゃんを確認している。最後に見た愛息の姿だった。  
 母を訪ねて―。ミモちゃんは街道を歩いた。歩いた。幾日かが過ぎ、力尽き辿りついた先がファゼンダだった。住み込みで働く青年が屋根のうえでおびえるミモちゃんを発見。うわさに聞くあの猫では、とすぐにピンときた。
 「三千レアルの猫」を一目見ようと、引き渡しの場となったボイツーバ市の警察署には四十人ほどのやじうまが集まった。〃母子〃の涙の再会に、周りも貰い泣きした。
 発見者の青年は文盲だった。受領書にうまくサインできなかった。その手がいくらか震えていた。受け取った懸賞金は最低給料の十五倍だ。「福招きの猫」とはまさにこのこと。金額の大きさに戸惑いながらも、青年は天の恵みに感謝した。
 広報したラジオ局にはいまも、「見つけたぞ」と、地元住民が猫を抱き、興奮の面持ちで列をなす。連れて来られた〝ミモちゃん〟はもう四十匹を超す。
 息子の生還に落ち着きを取り戻したナツミさんは、「おかげさまで家に戻ってきました。これまでいろいろとご協力ありがとうございました」と語っている。