コラム 樹海

 昨年十月起きた福島県人会の「大金盗難事件」は誰にも傷がつかない形で一件落着したようである。先だって行われた同県人会総会は、十二万レアル相当(日本円、米ドル、伯貨)の被害額をめぐり紛糾するのではないかと予想されていた。しかし、それもなく会計報告などすんなり承認されたという▼福島県人会は昨年八月に創立八十五周年を祝った。母県から出納長、海外移住家族会会長らが出席し、移住大県ならではの貫禄ある祭典を催している。その際に県から知事、県議会、友好協会による祝い金が贈呈されている。この金がごっそり盗難に遭う▼まさかのことが起きた。とんだ災難である。不可抗力といってしまえばそれまで。としても〃公金〃の扱い方に無神経であった点は批判されよう。県側の心のこもったお祝いの金、会員の〃貧者の一灯〃寄付金を預かっている立場上、責任は重いはずだ。それがふた月近くも事務所内に保管していたのだから首を傾げたくなる▼被害の穴埋めをどう処理するのか、世間の耳目を集めてきた。結果は簡単、強いて言えば会長交代で辻褄を合わせただけである。定款第十九条によれば、各理事は本会の名において生じた損害について「個人的に責任を負わないのを原則とする…」とある▼その傳でいくなら会長もつつがなく任期を全うし、後進のため立派に道を譲ったことになる。依然、金庫は空っぽのまま。なるほど一件落着とはそういう次第だったのか。(田)

03/02/05