日系農協活性化セミナー 先端現場を視察(6)=ビリチーバ・ミリン=12年連作で障害出ず=トマトとキュウーリを2期作

2月11日(火)

 「今はタクシーぼられることないの? ほんと?」。アルゼンチンはラプラタからの参加者・海蔵寺幸治さん(メルコフロール花卉生産者共同組合組合長)は、見るからに楽しそうにブラジル側参加者に質問。「今はメーター通りだよ」と返事がくると、「なんせ何十年前だったかな、ブラジル来たのは」と豪快に笑う。
 ガロア(小ぬか雨)の中、日系パラセ・ホテルを午前十時ちょうどに出発した「施設園芸コース」一行は、尽きることなくお国比べをしながら、昼食会場であるモジ市のエストラ店内レストラン・シバタへ。
 「僕の農場は二万六千へクタールもないよ」とミナス州のコーヒー農場主の下坂匡さんは、本紙三十日付の記事を見ながら記者に苦情。なにがどうなったのか、本当は「二百八十五ヘクタール」だそう。八九年頃の作付面積は二千六百ヘクタールあったそうだが、それでも一桁違う。「まあ、小さく出るよりいいよね」とグランデ・サンパウロ南伯農協の白石和久さんのありがたいフォローで爆笑に終わり、ほっと一息。
 午後一時半の予定通り、第一の目的地、ビリチーバ・ミリンの鈴木農場へ到着。主の鈴木啓三(六五)さんのハウスでは、一年間でトマトとキュウリの二作をし、十二年間連作をして障害がでてきてない。その秘密は〃有機肥料〃と〃木酢〃にあるという。
 水分が五〇~五五%の米ぬか一トンに一リットルほどのEM菌を入れ、その時の温度を見ながら切り返し、切り返し、三日ほど寝かせれば「ぼかし」(発酵肥料)のできあがり。「トマトの場合は骨粉や魚粉とか、その地方で安く手に入るものを混ぜたらいいですよ」とアドバイスする。
 トマトを取った畑に「ぼかし」を入れて水をしっかりかけ、木酢も入れ、ビニールを敷きつめる。そのまま一カ月から一ヵ月半置き、太陽熱で悪い菌を殺してから、キュウリを植え付ける。「木酢とレイチ(牛乳)を混ぜて散布すると虫除けになります。木酢の臭いが、山火事の臭いに似てるらしいです」。
 鈴木さんはできるだけ農薬や化学肥料と使わない農業を目指している。「トマトやイチゴは買ってきて食べたことない。怖くて買えないですよ。うちなんかはトマトに月一回ぐらいしか農薬やりませんが、普通は週に一、二回でしょ」。有機肥料のおかげでキュウリも単位面積当たり、通常の二倍の収量があるという。
 六人使って五千平米のハウスの手入れをしている。白石さんは「なかなかうちに出荷してくれないんですよ。モノがいいから、隠して売らないとケンカになっちゃうぐらい」と太鼓判を押す。将来はEM菌以外にも、林や竹やぶから持ってきた土着菌を使って「ぼかし」を作りたいと希望を語った。 (深沢正雪記者)

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