出稼ぎシンポ東京で開催=関心抱く人で満員=ブラジル大使最重要課題と位置付け=植木元大臣母国貢献に期待=二宮教授大泉町の住民感情に疑問提示

2月20日(木)

 〔東京支社〕十八日午前十時半から午後五時まで、主催外務省(中南米局)、後援法務省、文部科学省、厚生労働省で「在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウム」が、東京・新宿の日本労働研究機構「JILホール」で開かれた。会場の自由席には、在日ブラジル人やこの問題に強い関心を抱く人々で満員となった。在日ブラジル日系人は二重国籍者も含めると約二十八万人に達している。韓国・朝鮮人、中国人につぐ第三の外国人コミュニティーを形成している。主催者の挨拶に続いて、「在日ブラジル人コミュニティーの動向は最大の関心事である」という駐日大使の挨拶で、シンポジウムが始まった。

 第一部の基調講演では、まずシゲアキ・ウエキ元鉱山動力大臣が「最近の日伯関係と在日ブラジル人就労者について」と題し、政治、経済、金融、社会・文化の各観点から意見を述べ、「ブラジル国内の状況が改善されれば、在日ブラジル人も帰国し、日本での経験を生かしてブラジルの発展のために活躍できるだろう」と指摘。そしてその推進には、まず個人レベル、あるいは家族レベルで対応すべきだという考えを述べた。
 政策研究大学院大学松谷明彦教授は、「日本の人口減少がもたらす経済社会の変化」につき講演。
 フランシスコ・カルヴァーリョ参事官は「ブラジル政府と在日ブラジル人コミュニティー」をテーマに語たり、長野県では、ブラジル日系人子弟のための奨学金が誕生していることを報告。 
 サンパウロ大学二宮正人教授は、「ブラジルから見た在日ブラジル人就労者の動向」について講演。間接雇用の問題が依然大きく社会保険、社会保障の諸問題の未解決。また在日ブラジル人とすでにブラジルに帰国している十四万人を加えると、日本就労者は日系人総数の三分の一を占めていることを指摘。また教育問題についての意識変革の重要性などについて語った。
 第二部の第一セッション「在日ブラジル人の就労と社会保険」では、サンパウロ大学教授カズオ・ワタナベ教授、元サンパウロ総領事館領事で現在日ラテン・アメリカ労働者の相互扶助・救済基金の鈴木康之代表がコメンテーターとなった。
 第二セッション「子弟教育」では在日ブラジル人学校協会ペドロ・メンデス・ネット代表が報告。
 第三セッション「出入国管理及び外国人登録等」では、「サンバの町」として知られた群馬県大泉町の長谷川洋町長が報告。
 人口四万三千人の同町において外国人登録者数は四十一か国六千三百人に達し、人口の十四パーセントを超えていること。平成九年から十三年までの外国人居住者の住民税、国保税の滞納が四億円近くに達していること、また共生のための費用がかかることなどを理解してもらいたいと語る。「本音でいえば、選挙にまわっているとき、これ以上日系人を増やさないでほしいという地域の叫びが根強かった。これが実体である」という。

 これら発言に対し、二宮教授は、税金を滞納することは悪いことに決まっているとしても、自治体として徴収するシステムがないのは不可解であることや、またブラジル人は、決して日本に行きたくて大泉町を選んだのではなく、上毛促進雇用協議会の方が來伯し、群馬県人会などを通じてリクルートしたことを指摘。「今頃になって、住民感情が許さないとは……。ブラジル国は、日本人であるわれわれをちゃんと受け入れてくれた。一度入れたら外国人も日本人も同じに扱わなければならないことはわかりきったことではないか」と疑問を投げかけた。 また「ブラジル人側も努力しなければならないが、行政も日本人住民の方も理解してもらわなければ……。ブラジル人にとって住みやすい町が、どうしてこうなってしまったか」という。
 本シンポジウムの座長である千葉大学手塚和彰教授は、「日系ブラジル人の方たちが、私共とは違った文化を持ち、雰囲気を持ち、考えをもち、日本に大勢住まわれることは大きな財産です」と最後に結んだ。