コラム 樹海

 秋の叙勲候補者を一般からも受け付ける――とサンパウロ総領事館が発表した。くわしくは八日付本紙7面で報じられたとおり。幅広い候補者の中から選考したいとする総領事館の趣旨に賛成したい。戦後初の試みという前向きの姿勢がよろしい▼叙勲ではないけれど移民九〇年祭の外務大臣表彰(木杯)で生じた納得し難い例を苦々しく想い起こす。祭典委員会といっても文協主導の我田引水が目立ち、文協関係者で七十歳に満たない諸氏が受賞者の中に幾人かいた。八十歳、九十歳の先駆移民(多くの県人会が推薦していた)を差し置いての〃お手盛り〃申請だったのである。案の定、声なき声の不評を買ってその後、文協が信頼を失っていく一因をつくった▼さて、叙勲の申請は密室の中で行われていた。ご三家と称される文協、援協、県連の推薦が必要で、例外を除きこの手順を踏まないと受け付けられなかった。総領事館もそれだと楽だし言い訳も立とう。このごろのご三家は全部とは言わないが、叙勲候補を推薦するにふさわしい貫禄と吸引力を持つかといえばそうでもない。このあたりに総領事館も気づいたのだろう▼今回の決定は、惰性を断つ思い切った手立てとみる。コロニアは意外に狭い社会だ。「一将功なり万骨枯る」の態様を忌み嫌う土壌もできている。公募だからといっていい加減な推薦はよろしくない。叙勲対象はあくまで衆目の認める人であることだ。いつの世でも大衆の目は確かでごまかせない。           (田)

03/03/12