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コラム 樹海


 日本移民100周年は五年後に迫った。この祭典事業に早くも取り組んでいるパラナとは程遠くサンパウロの日系コロニアは一向に腰をあげようとしない。具体化は先送りである。50年祭のころとは様相も一変、先達の多くは他界し、残る一世も高齢化が進み往年の覇気はみられない。全日系の人口比率から言ってもほんの一握りにすぎぬ一世がいくら力んでみたとてたかが知れている。ここは次世代に頼り、協力を得なければ物ごと前に進まない▼先月サンパウロでユニークな催しがあった。《20年後の日系社会と日系人との連携事業について》の公開討論会だ。JAICAサンパウロの支援があったというが、これまでに例をみない新鮮な企画で興味をひくに十分である。二十年先の在り方を探求するために真っ正面から取り組んでいく次世代諸氏の意気込みを頼もしく思う▼かつてこの種の討論会が一世主体のコロニアにあっただろうか。寡聞にして知らない。「日伯複合医療機関」「日伯教育センター施設」の創設などの提言は意味深長で興味をそそる。当日は元大臣、連議、高裁判事。現役の連議、外務省局長、大学教授らエリートが一堂に会した。この事実は、ブラジル社会で活躍する日系指導階層の厚みを物語っていよう▼同じ血の流れを共にする一世は、後顧の憂えなく彼らに未来を託すことができる。それにつけても過去において一世と二世、三世との対話の機会が皆無に等しかったことが悔やまれる。   (田)

03/05/07

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