ホーム | 連載 | 2003年 | 文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー | 文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(2)=樋口トモコ 第五副会長/文協会員との連絡及び会員拡充担当=「会員拡充には、もっと宣伝が必要。マーケティング専門家を入れる話もしてます」

文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(2)=樋口トモコ 第五副会長/文協会員との連絡及び会員拡充担当=「会員拡充には、もっと宣伝が必要。マーケティング専門家を入れる話もしてます」

5月15日(木)

 「二年前からね、わたし日本語の勉強を始めたんですよ。やっぱり漢字は難しいわね」
 自分の話す日本語はまだまだーと謙遜する樋口トモコさん。その気さくな雰囲気からは、三十三年間もサンパウロ大学で教授を務めたとは、にわかには想像しがたい。
 そして、ブラジルでは女性として初めて、博士号の上の資格、専門外の分野でも教えられる「リヴレ・ドセンテ」を取得した女性学者の先駆けでもある。
 八歳からはサンパウロ市だが、ポンペイアで生まれている。サンパウロ大学で生物化学を学び、卒業後に博士号を取得。六六年にはまだブラジルでは誰も研究を始めていなかった遺伝子j学を学ぶため、ニューヨーク医科大学へ留学する。
 二年半の滞在後、サンパウロ大学で教鞭を取りながら、生物化学の研究を続け、七五、八二年にも論文作成や分子化学の研究などのために渡米している。
 日系社会が誇る才女だが、実は文協との関係も深い。日系研究者協会で十二年間委員を務め、前執行部では文協初の女性理事、今回はもちろん初の女性副会長となっている。
 「『女性で副会長ですか』ってよく言われるんですよ。でもこれからは文協に女性の参加が増えるのは自然な流れじゃないですか」と今回五人の女性理事が誕生したことも強調する。
 ウーマンリブ全盛時代のアメリカを経験している樋口さんだが、フェミニスト特有の押し出してくるような強さは感じられない。むしろ日本的で優雅な雰囲気を自然に醸し出す女性という感じだ。
 「『日本文化』の中で、我々がブラジルに提示できるものは多いのに、その橋渡しを文協が出来ていないのは残念」と語る樋口さん。
 自身も生け花展や具象画展などには、必ず足を運ぶというが、盛り上がっているのはイナウグラソンだけ、と指摘する。
 文協会員の拡充が叫ばれて久しいが「やはり宣伝がもっと必要。現在マーケティングの専門家たちとチームを作る話が進んでいます」と話しながらも「この一カ月は理事の人選に時間を取られていた」と打ち明ける。
 同時に文協の会員や日本文化に興味のある人が集えるスペースが文協内には絶対必要と主張する。
 もう亡くなった樋口さんの母親も「文協ビルには、『用が終わったら居場所』がない」といつもぼやいていた、と回顧する。 
 「幼い頃、戦争で日本語が勉強できなかった反動でしょうか。今になって日本文化、日本語に興味が凄くでてきたんですよ」と樋口さん。
 かつて日本に行った時に看板の字が読めず、聞いた人に「メガネを買いなさい」などと言われ悔しい思いをした、という。
 「日本人の顔をしているから、分からなかったのね。でも今はもっと日本語、特に漢字を勉強して、日本に行くのがこれからの夢」と笑う樋口さん。
 これからの文協に多くの女性が参加できるようウーマンパワーを大いに発揮して、改革に奮闘することだろう。 (堀江剛史記者)


■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(1)=伝田英二(66)第4副会長・管理及び財務担当=「それが文協のためになるのならば、過去をほじくりだす事も辞さない」

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(2)=樋口トモコ 第五副会長/文協会員との連絡及び会員拡充担当=「会員拡充には、もっと宣伝が必要。マーケティング専門家を入れる話もしてます」

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