文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(3)=吉岡黎明(67)第一副会長/公的機関及び官憲との連絡担当=「『日系コミュニティーは日系人に何をしてくれるんだ?』という問いに答えていきたい」

5月16日(金)

 「文協にデカセギに対応する機関を作る。時間がかかると思うけど、ゆっくりしていられないですよね」
 確かに日系コミュニティーを代表する文協がデカセギ問題に着手するのは、遅すぎたのではないか。
 文協ビル内に国外就労者情報援護センター(CIATE)はあるが、あくまで日本の厚生労働省の外郭団体。活動内容も日系コミュニティーの要望に即したものは少ない、という声も多い。
 日本のデカセギ労働者の社会保険問題やデカセギ子弟の教育の問題を、日系コミュニティーの代表たる文協が援護していくー。
 「文協の会員になるメリットは何?という人も多いけど、この機関が文協にできることにより、日系コミュニティーの繋がりは強くなる、と思います」とその思いを語るのは、吉岡黎明第一副会長だ。
 CIATEの評議員も務め、デカセギ問題にも詳しい。天理大学ブラジル学科客員教授時代には、デカセギ・シンポジウムも開催している。
 一九三六年第三アリアンサ出身。サンパウロ大学では公衆衛生を学び、大学院では人文地理の博士号を取得している。
 アルモニア学生会の理事、教育センターの運営委員を八十年から、「憩いの園」の理事(現在は第一副会長)を九二年から務めるなど、教育や福祉問題にも深くかかわってきた。パウリスタ野球連盟の元会長の経験もある。 
 吉岡氏の担当は「公的機関及び官憲との連絡」だが、それをどうデカセギ対応機関の設立に繋げていくのかー。
 「やはり政府や州の教育機関、もちろん教育省などとも話し合いが必要だし、日本の外務省や国際協力事業団などにも積極的に協力をお願いしていく」とデカセギにおける両国の関係強化の役割を文協が行っていく考えを明かす。
 もうすでに日本全国で活動を始めているNPO団体(特定非営利組織)との連絡も行い、それが大きな動きに繋がれば、と話すものの「それらの計画は重要だが、時間がかかる問題」とも。
 現段階ですぐ活動を始めていきたい、と吉岡氏が話すのは「デカセギ子弟にブラジルの教科書を送る運動」だという。
 「帰国後のレベルの一定化を図るため、統一した教科書にするのも重要」とも付け加える。
 「『日系コミュニティーは日系人に何をしてくれるんだ?』という問いに対する答えを出していきたいんですよね」と語る吉岡氏。
 新生文協の目玉事業、デカセギ対応機関の設立に第一副会長である吉岡氏の活躍が期待される。
(堀江剛史記者)

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