コラム 樹海

 「首都機能移転」という壮大な計画は、どうやら宙に浮いてしまったらしい。何しろ国会と最高裁判所や首相官邸を東京以外の適当な県に移すというのだから構想としては大きい。霞ヶ関の官庁も引っ越しするはずだったけれども、国の立法・司法・行政の三中枢機関の移転だから話としては面白い。が、さて実行となると費用も巨額になるし簡単ではない▼もっと難しいのは候補地の選定であろう。方々の地方自治体が名乗りを上げたし宮城県などは県議団をブラジルに派遣し首都ブラジリアを視察するほどの熱の入れようだった。結局、栃木・福島、岐阜・愛知、三重・機央の三地域が候補地に選ばれたけれども、衆院の委員会も一か所に絞り込むことはできなかったし、事実上の断念と見ていいのではないか▼尤も、三地域には不満の声が多い。栃木と福島はこれまでに九億円もの費用を使ってきたし他の二地域も同じような規模の予算を使っているし「我れらが県に首都を」の夢もある。だが、国会が首都移転の計画を決めたのは八〇年代後半のバブルの頃である。土地が暴騰しての移転論であるが、今や地価は半額以下に低下している▼移転費用も最大で十二兆円の試算もある。長引く不況の現在、これを何処から引き出すかの課題も残る。そうした問題を抱えながらも衆院の委員会は「移転の実現」を求めているけれども、客観情勢がまったく変化したのを認め「移転計画」をご破産にすることも一つの考え方ではないか。(遯)

03/06/03