文協が大豆普及に着手=〃畑の肉〃を貧困層に=飢餓ゼロ計画に協力=農務大臣も関心示す

6月5日(木)

 みそ、納豆、豆腐などに加工され、古くは弥生時代から日本の食文化を支えてきた食品といえば大豆。タンパク質、ビタミンを豊富に含むことから〃畑の肉〃と呼ばれ、その栄養価の高さは広く認識されている。上原新体制のもと、船出したばかりの文協がここに目をつけた。大豆を利用した加工食品や料理をブラジル中に広めようというのだ。「現政権の『フォーメ・ゼロ』(飢餓ゼロ)政策に協力できれば。一時的なものではない全国的なキャンペーンにしたい」。発案者のひとりで、文協改革委員長の渡部和夫氏は真剣だ。会長以下執行部も乗り気でおり、文協では特別企画委員会の一事業として、大豆の普及に取り組んでいきたいとしている。来週十二日には初めての会合も予定されている。

 日本の国際協力事業団(JICA)の協力もあって、ブラジルは今や、世界でもアメリカに次ぐ大豆の巨大生産国に成長した。しかしー。一般ブラジル人の毎日の食卓に大豆を利用した食品が上ることはほとんどないに等しい。折からの日本食ブームで、みそ汁、豆腐、醤油などが市民権を獲得し始めているとはいえ、まだまだ中流階級以上に限られているのが現状だ。
 「肉をいつも食べられる国民はそんなに多くない。貧困地域の人々にタンパク質が豊かな大豆が広まれば、ブラジル人の食生活の改善につながると思う」と渡部氏は語る。「加工の技術や料理のレシピを教える講習会を開くことからまずは始めたい。地方の文協を巻き込んで、全国規模の運動にするつもり」。
 「フォーメ・ゼロ」の公約を掲げているブラジル政府も興味津々のようだ。農務大臣補佐官の山中イシドロ氏が大臣にこの話を持ちかけたところ、「具体的なプランを聞きたい」と、すぐに関心を示してきたという。
 ヘルシー志向の欧米ではすでに健康食品として、大豆の加工食品への評価が高い。最近は抗ガン、抗菌と、その潜在的なパワーが次々と明らかになっている。
 移民百周年まであと五年。ブラジルの原生林を農耕地に変え、「農業の神様」と称えられた日本移民が今度は食文化に革命をもたらすか。事業の成り行きに要注目だ。