由緒ある建物2館=県連、日帰りで訪問(下)=モジ箱根から富士山?=どこか神秘的なカザロン

6月14日(土)

 博物館で予想外の面白さを楽しんだ県連日帰りモジ旅行一行は、一路、コクエラ植民地の「モジ箱根」(シッチオ松尾)へ。名前の由来は、五二年前に五人の有志が観音寺を作ったことに発するそう。現在は食事だけでなく、プールや宿泊施設もある。
 昼食後、観音寺のある高台まで登ったある参加者は、〃箱根〃だけに「今日は曇りだから見えないけど、晴れてると富士山が拝めるらしいよ」と爆笑。終始にぎやかムードだ。
 午後四時過ぎにようやく最終目的地のカザロン・デ・シャーに到着。
 「みなさん、ようこそいらっしゃいました」――。迎えてくれたカザロン保存会の中谷哲昇(あきのり)会長は、独自の作風を持つ陶芸家として有名。そのせいか、足元はペタペタのサンダル。朝方降った雨でできた、ぬかるみをものともせずに先頭を切って歩く。
 玄関の両側を支える太い柱に、枝付きの丸木が使われており、自然の曲線を生かした独自の寺社建築様式だ。建物全体の主要構造には組込み式が採用されており、ほとんど釘が使われてない。十五×三六メートルの細長い二階建て建築だ。
 三十年もののユーカリ材が使われているが、ブラジルにユーカリが導入されたのが二〇世紀初頭だから、ごく初期のそれが使われていることになる。天然の曲線を生かした作りは、まるで〃木造建築のガウディ〃のよう。もし宿泊したら、〃神秘的〃な体験でもできそうな雰囲気だ。
 この建物は、片倉合名会社が長野県諏訪市出身の大工棟梁・花岡一男を呼び寄せ、潤沢な資金を与えて一九四二年に建設した。
 二十年ほどお茶工場として操業した後、放棄されたそう。現在ではかなり損壊がひどく、早急に改修工事をする必要がある。八二年に州政府の、八六年には連邦政府の文化財に指定されたが、なかなか費用は集まらない。
 昨年、連邦政府からの援助で、家屋全体を覆う鉄筋の屋根をふき、雨によるダメージはなくなった。しかし、肝心の本体の改修は「なんとか百周年までには」と中谷会長は語る。
 最近、同敷地内に陶芸教室用のスペースを設け、現在、ガス窯を中谷会長自身が作っている。「今月中に窯を完成させ、七月からさっそく陶芸教室を始めたい」と意気込む。将来的には「日本文化センター」として活用し、観光地化する夢を抱いている。
 薄暗くなった午後五時半頃、ようやく一行はサンパウロ市への帰路についた。(おわり)

■由緒ある建物2館=県連、日帰りで訪問(上)=予想外の収穫 州立博物館=多い日系人関連の展示

■由緒ある建物2館=県連、日帰りで訪問(下)=モジ箱根から富士山?=どこか神秘的なカザロン