コラム 樹海

 ブラジルは多民族国家であり文化や暮らし振りもそれぞれが個性的ながら多彩な色を誇る。白人が最も多く次いで黒人と白人の混血と黒人がほぼ半数を占めている。ポルトガルの植民地の頃にアフリカから奴隷として導入された影響が大きいのだが、このためか世界的に見ても「白人と黒人の差別の少ない国」として知られている▼確かに旧南アフリカのアパルトヘイトのような凄まじいばかりの差別政策はなく、北米の社会が持つ厳しさもない。サンパウロの前の市長さんや現役の大臣にも起用されているし最高裁判事までがいる。TVアナウンサーや歌手らの芸能人。ペレーを初めとするスポーツ選手として活躍する黒人系も多いのは多言を要しまい。社会的にも平等だし、意識的・故意に「差別」しようものなら罰せられもする▼だがー。社会的な地位は必ずしも高いとは言えないのではないか。ルーラ大統領が最初に取り組んだ「飢餓ゼロ作戦」の対象者に白人と黒人の混血(パルド)と黒人が多いのも否定し難いし教育水準も低いのが現実なのである。ブラジル地理統計院(IBGE)の調査結果を見ても、白人と黒人・パルドの所得格差は大きいのである▼この国は一〇%の高所得者が支配すると評されるけれども、この一〇%の階層のうち白人が八八%を占めるのをどう評価するかーである。一方、低所得一〇%のうち六八%が黒人とされるブラジルの未来は決して楽観を許さないように思える。この所得格差の是正こそが最大で喫緊の政治課題なのだろうがー。   (遯)

03/06/17