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橋田ドラマの集大成=親子4代 壮大なスケール

7月4日(金)

 【東京支社】一九二五(大正十四)年三月二十二日午前九時三十分、東京・芝浦の小さなスタジオから「JOAK、JOAK、こちらは東京放送局であります」という声が電波にのった。日本のラジオの第一声だ。
 その放送開始から八十周年になるのを記念して、橋田壽賀子さんがブラジル移民をテーマに書き下ろした。橋田さんは、世界的にヒットしたNHK朝の連続テレビ小説「おしん」の作者で、生まれた年は、NHKの放送開始と同じ大正十四年である。橋田さんは、
「三月、NHKが発足し、五月に私が生まれました。因縁を感じます。八十歳のときオンエア―していただくのは、私にとっても一つの記念になります」と語る。
 主人公は、大正十四年生まれのハルと二歳下のナツという姉妹である。昭和、平成の時代とともに生きたハルとナツの波乱万丈の生涯を軸に、その親子四代にわたる庶民の壮大なスケールのドラマである。
 橋田さんは、今年の四月から他の仕事をいっさい断り、熱海の自宅で、このドラマの執筆に専念し、驚異の高視聴率を記録した「おしん」を超える橋田ドラマの集大成をめざしている。
 一九三五(昭和十)年、北海道開拓村で赤貧洗うがごとくの暮らしから抜け出すべくハル(十歳)の一家はブラジルへ移民することになる。だが、ハルの最愛の妹ナツ(八歳)だけが、トラホーム(眼病)で不合格むになり、二人の姉妹は、ブラジルへ向かう船が出る港で引き裂かれる。
 姉ハルのブラジルでの移民生活は茨の道の連続だった。一方、日本に残された妹ナツも戦争に翻弄されて苦しい生活を強いられる。それはまるで〃二人のおしん〃のようだ。
 離れ離れになった姉妹はお互いに手紙を書き続けるが、運命のいたずらで、ともに相手の手紙を手にすることができなかった。
 家族はどうあるべきが描かれているスケールの大きいドラマになっている。
「外国にいた方の方が、日本がよく見えます。両方(ブラジルと日本)から書かせていただいた方が際立つと思っていたのです」と橋田さんは語った。

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