コラム 樹海

 ワンマン宰相・吉田茂は、新聞社のカメラマンに水をぶっかけたりのご乱行もながら「公私を別にする」ことでも有名な政治家だった。今年、百歳を超し大磯でひっそりと泉下へと旅立った「おりん」さんと紋付き白足袋が似合う宰相の仲は知らぬ人がいないほど有名で新聞などもごく普通の記事にして報じる。当時はそんなことが許される時代だったのである▼だがー吉田茂首相はここからが厳しい。私的にはともかく公的な仕事のときには、乗用車もまったく別なのである。公と私を厳しく区分するのが「吉田流」であり、これがまた国民から拍手されたらしい。なのにー。今の日本はどうしたのだろう。背任容疑で逮捕された和歌山市の前市長・旅田卓宗被告は料亭の若女将と公用車で密会を重ねていたのだそうだからー市民たちは驚きびっくり仰天する▼それも五回や十回ではない。警察が運転日報を調べてみると二年間に百二十回もが記録されているのが解った。まだ他にもある。諸外国の視察と称して若女将を同伴しては韓国だ何処だと飛び回っている。しかも、旅費などは出入りの土建会社が支払っていたというから酷い話だ。こんな醜態を演じながら「公私の別はきちんと」と述べたりもしている▼政治家も恋はする。ウインザー公のように英国の王位を捨てシンプソン夫人と結婚したような熱っぽくも激しいのもある。旅田前市長にもこんな純真な心があったのかは真に疑わしい。恋を彩るのが「利権」という黒い壁と疑惑だけが浮かび上がってくるのではいかになんでも情けない。  (遯)

03/08/02