会議所・業種別部会長懇談会=〃どしゃ降り〃の中で=下=日伯間FTA交渉を=メキシコを他山の石に

8月7日(木)

■国外旅行から盆栽へ■
 建設不動産部会では、インフレ調整などによる労務賃金の高騰が指摘され、現場要員を減らし建設を長期化させるなどの採算面での対策が取られている現状が発表された。またレアル高により、ドル運用投資家が不動産投資に切りかえる傾向が現れ、高額アパート販売は好調。下期は明るい材料がなく、楽観視できない状況。
 航空会社などが所属する運輸サービス部会も、「簡単に総括すると〃どしゃ降り〃」。特に航空業界は911テロで落ち込んだ後、戻りかけたところでSARS騒ぎやイラク戦争の直撃を受け、〃Wパンチを喰らった〃状況。輸送部門では六月からの税関ストライキが長引き、輸出入業務の延滞が顕著になっている。「ストの早期解決を切望する」との要望が出された。
 旅行業界などが関係するサービス部門でも、国外旅行を避け国内へ、さらに近隣周辺のゴルフ、ゲートボールから、外出せずに盆栽へと比喩し、「なかなか旅行までいかない」との傾向が指摘された。過当競争がいわれるホテルの稼働率も落ちており、五星ホテルでも占有率が昨年五二%だったのが、今年は四〇%台に落ちている。
 自動車部門では、〃どしゃ降り〃の自動車、絶好調の二輪車、〃まだら模様〃の自動車部品との色分けがされた。自動車業界全般としては、国内新車登録数が昨年同月比で八・三%落ちており、各社在庫を抱え、従業員に一斉休暇を取らせるなどの対応を迫られている。生産設備稼働率は六割程度にまで落ち込んでいる。
■注目のFTA問題■
 続いて、近年注目されている、日伯間の二国間自由貿易協定締結などに代表されるFTA問題についての報告もされた。
 NAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコ自由貿易協定)形成により、対米関係が強化されたメキシコでは、日墨貿易が相対的に不利な情勢に陥った日系進出企業群が撤退せざるを得なくなった。「この苦い先例を他山の石として、日伯間FTAの早期締結を働きかける必要がある」ことが繰り返し訴えられた。
 NAFTA形成は、九〇年にブッシュ米大統領(父)が提唱した南北米自由貿易圏形成への第一歩と位置付けられていた。
 すでに米伯両国を共同議長国として〇五年をめどに創設が目指され、特に最近動きが加速している南北米州三十四カ国が加盟する米州自由貿易圏FTAAは、その延長線上にある。同様に、メルコスールとEU間のそれが〇六年に予定されており、「このままではブラジル進出の日系企業だけがババを引きかねない。日伯経済関係の再構築の必要性が叫ばれている」と指摘された。
 目下のところ、日伯の通商協定の交渉を妨げるのは農産物自由化問題。日本側通商交渉は農産物を除外するが、ブラジルは「農産物の進出を保証するなら交渉に応ずる」との態度。
 この問題は、グローバル化の進んだ企業ほど柔軟に対応できることや、フリーゾーンであるマナウスなどの特殊地域では事情が異なるため、今後も、様々な面から検討を深める必要性が確認された。
 懇談会には、来伯中の後藤博子参議や、OECDへの栄転の決まっている赤阪清隆サンパウロ総領事らも出席した。