教師謝金、有効に使おう=一部機関、研修会に向ける動き=疑問視される「生活費に充当」=近い将来JICAがカットか

8月12日(火)

 移住地でほそぼそと日本語教育に取り組んでいた人に少しでも謝意を表そうと始まった日本語教師謝金。三十年以上の歴史を持ち、教師一人あたり年間に三~五万円支給される。国際協力事業団(JICA)の現地助成の一つの柱だ。だが、JICAの予算が縮小されていく中、謝金の使途に疑問が持たれている。教師自身のレベル・アップではなく、生活費として浪費されることもあるからだ。助成金をより有効に使おうと、一部の日本語関係機関の中から、謝金を研修会費用に振り向ける動きが出て来た。
 「JICAからの援助額が年々、二〇%削られている。このままだと、五~六年後にはゼロになる」。ここ最近、日本語教育界で、そんな話がささやかれている。
 JICA側も将来のことは分からないとしながらも、予算の減額傾向について、否定せず、各地の日語教育機関の危機感は募る。
 世代交代などで日系の日本語学習者数は低迷。今後、普及を推し進めるには、教師の資質向上を優先させることで首脳部の意見は一致する。つまり、研修会の充実を図るということだ。 
 では、予算はいかにすべきかー。謝金の使い方に注目が集まる。
 ブラジリア日本語普及会(三分一貴美子理事長)は今年から、謝金制度を廃止、該当額を地区研修会などに振り向けている。
 予算に余裕が生まれたため、州外から講師の招聘が可能になった。また、普及会所属の教師が講師を務める場合には、手当を支給。研究発表の動機付につながると、関係者の期待は膨らむ。
 JICAブラジル事務所を通じて交付される謝金は、リオデジャネイロ文化体育連盟が窓口になって受け取る。管轄区域に、ブラジリア連邦直轄区、ゴイアニア州、リオ州、ミナス・ジェライス州、エスピリト・サント州、トカンチンス州が入る。
 今年に入って二度、一都五州の代表者会議を開き、各地の研修会に力を傾注するため、謝金を回すことを決議した。
 ブラジリア日本語普及会が先陣を切る形で、謝金の交付対象となる教師一人一人から署名を集め、JICA側に提出。四月の地区研修会から、実行に移した。
 日本語普及センター(谷広海理事長)は今年の上半期、JICAに謝金を申請。既に、三百六十八万円分の交付決定通知を受けた。
 谷理事長は「特に、奥地の教師にとって謝金は必要なもの。できるだけ減らさないよう、これからもJICAに働きかけていくつもり」と、教師に配慮を示す。
 謝金を研修費に転化しても、それが、いつまで継続されるのか分からないという不透明感がある。
 JICAは今年、独立法人化、国際協力機構に組織が再編される。上、下半期の二度に分けて、助成申請になった。JICAサンパウロ支所の説明によると、管内で年額昨年比二百万円減少する見通し。
 昨年度より、減額分は研修費助成に上乗せして援助しているという。謝金に変わる新規事業を計画、別の名目で助成申請が出れば、新たな予算が下りる可能性もあると、現地側の自助努力を促している。