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見直される百年叢書=人材不足に悩む人文研

9月30日(火)

 以前から人材不足に悩んできたサンパウロ人文科学研究所(=所長不在)だが、更にそれに拍車がかかってしまった。日本移民百周年記念事業として、昨年九月に発表した『人文研研究叢書』出版事業の見直しと、活性化を図る企画が今後求められるようだ。
 同叢書に関して、森幸一USP文学部教授は、大学で進めているプロジェクトとの折り合いがつかないとしてコーディネーター役を辞任。十九日の理事会で「出来るだけの協力はする」と述べるに留まった。
 実質的な〃主力〃と見られていた元交流協会生の研究員は、国際協力事業団(十月一日から国際協力機構)の青年ボランティアとして、再来伯するため一時帰国。しかし、選考に漏れ、「日本で就職活動を行なっている」と人文研に電話連絡している。
 これに対し、人文研側は「出来るだけの経済的支援はするから、事業を手伝ってほしい」とのEメールを二度送ったが、全く返答がない状態が続き、二十五日の会議で「(再来伯の)意志はないようで、戦力としては考えられない」との決断を下した。
 二人の主力メンバーを失った形になるが、『研究叢書』出版事業を続行することが、同会議で確認された。当初の計画通りとはいかず、「出来るものからやっていくしかない(宮尾前所長)」状態のようだ。
 十月には、同叢書の第二弾として、勝ち負け問題を扱った冊子が発行され、日系文学運動を主体にした第三弾も予定されている。
 理事を中心にした企画委員会は、週一度の会合を予定しており、現在の具体案としては、勉強会などを兼ねた公開ゼミが提案されているようだ。
 しかし、後任不在で頭を痛めている宮尾進前所長は「企画を練っても、実際にその実行にあたる人間がいなければ…」と苦笑い。
 文協改革に伴う移民史料館との合併構想もあるが、まずは研究員を確保することが早急な課題となっている。

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