日系人とは何か=安立仙一、渡部和夫 半世紀の交錯(1)=文協創立時の役目終え=次の50年のあり方模索

10月2日(木)

 現在行われている文協改革。大きな動きは未だないとはいえ、従来なかった方針を次々と打ち出し、ようやく胎動を始めたといえる。文協改革最終報告書によると、改革の矛先は団体運営に限らず、日系社会や日系人の定義見直しにも向けられている。その中心的役割を担うのは、コロニアと距離を置く二世インテリの代表とされていた渡部和夫改革委員長。しかし、文協との邂逅は半世紀前にさかのぼり、七十年代から論じてきたその日系観は現在、改革の本流となっている。その変遷を故安立仙一前事務局長へ行なった、最後のインタビューと共に四回にわたって連載する。
◇本文
 勝ち負けの問題を巡って、混乱を極めていた戦後の日系社会。定住が進むにつれ、その負のイメージを払拭する必要性を感じ、コロニアは新しい方向性を指し示してくれるリーダーを希求していた。
 サンパウロ四百年祭の参加は、コロニアへ大きな自信を与え、それが大きな足がかりとなって、サンパウロ日本文化協会へと発展してゆく。
 同祭の協力委員長を務め、初代文協会長となる山本喜誉司が掲げた、「排日の材料の発展的解消には、文化を以ってせねば」というその理念は、一九五八年の日本移民五十周年祭開催と文化センター建設というコロニアを挙げた事業へと膨らんでいった。

 目的のない組織は弱体化 する。新執行部にはこれ から、日系コロニアが実 現に五十年、百年かかる ような大構想を描いてほ しいー。

 この山本構想が大きな軸となり、以降の会長はその遂行者であった、という安立仙一前事務局長の見地に立てば、史料館建設、七十周年祭を実現した〝文協中興の祖〟中沢源一郎会長の代に文化センターの完成をみて以来、文協は目的を失ったのかも知れない。
 実体のない団体と化してしまった日系団体連合会(UNEN)存廃を傍目に、積極的に地方との連携を強調し、日系人と日系社会の新しい定義を掲げる現執行部。
 それは、五十周年祭で全伯レベルの組織作りのため、地方評議員会を結成し、文化を武器として、ブラジルにおける地位向上に奔走したコロニアの一時代と相対するものがあるのではなかろうか。

 歴史は繰り返すー。半世紀を経て、同様の問題に直面した前執行部からの悲鳴に呼応して、改革準備委員会は結成された。
 〇二年十月から、数ヵ月にわたって、意見聴取活動を中心に行なった同委員会。その動きを文協創設期、文協ビル建設、七十、八十年祭と共に、四十六年間の文協勤務における印象深いシーンの一つに挙げていた安立さん。
 委員会側からの要請もあって、病をおしての協力の傍ら、満足そうに漏らしていた。
 もう、大丈夫―、
 リーダーは現れた。
   (堀江剛史記者)

■日系人とは何か=安立仙一、渡部和夫 半世紀の交錯(1)=文協創立時の役目終え=次の50年のあり方模索

■日系人とは何か=安立仙一、渡部和夫 半世紀の交錯(2)=渡部氏=文協とピラチニンガ=独自の論で両方に距離

■日系人とは何か=安立仙一、渡部和夫 半世紀の交錯(3)=本の日本人とは別=コロニアはブラジルの一部

■日系人とは何か=安立仙一、渡部和夫 半世紀の交錯(4)(最終回)=日本文化を心に宿すもの=これ全て新〃日系人〃?!