高倉さんロング・インタビュー=下=島国の意識を解き放つ=自転車にのぼり立て辻説法

10月11日(土)

 ―在外選挙を通して、日本にどんな風穴を開けていきたいと。
 バブル崩壊後、トップから庶民まで縮み志向でしょ。しかも日本で生まれ育った者だけが日本人だという島国の意識の壁、差別の壁が続く。それを解き放ち、オープンマインドにしたい。ユダヤ人、中国人は海外のネットワークですごいパワーを持っている。日本もその国に根を張った日系人を活用し、地球規模のビジネス、文化交流をするようになってほしい。
 ―日本のODA、進出企業の現況にも厳しい見方をされています。
 パラグアイの最大の援助国は日本。しかし、箱モノをいくら造っても、日本からの専門家が帰るとペンペン草のようになったり、病院では最新の医療機器がなくなるケースもある。現地やブラジルの優秀な二世、三世に任せる「南南協力」でやれば経費は三分の一で永続性、実行力もある。日本が草の根レベルの国際協力というなら、日系人を活用すべきです。
 北米でも、日本企業は採用した日系人が優秀であってもトップにしない。パンアメリカン日系大会(北米・南米の日系人大会)でニューヨークの日本商工会議所の幹部らと話すと、トップは日本的な体系や価値観の人でないと、という。北米の人たちも反発していましたよ。日系人・社会の活用は、おねだりじゃない。日本の役に立ちますということです。
 ―現行の制度では、政党から立候補しない限り海外有権者の直接の支援は得られません。
 与野党いずれの候補にもなるのは難しいと分かっています。参院選の選挙区選挙は古里の大分県か、南米からの日系人就労者が集まる愛知県か。いずれにしろ、自転車にのぼりを立てつじ説法をします。捨て石となるのは覚悟です。

視覚

80万人超える邦人
政府は応える責務

 在外選挙が岐路に差し掛かっている。導入時は「新しい票田」と政策PRに努めた各政党も関心を失う。在外選挙人名簿の登録は二〇〇〇年の衆院選が五万八千余人、〇一年の参院選は七万三千余人で、投票率はいずれも29%台にとどまったからだ。総務省選挙課が昨年九月にまとめた最新の登録者数は七万二千四百六十五人(中国五県で三千三百九十二人)。低迷が続いている。
 登録申請者の居住地を管轄する在外公館と、国内市町村選管を書類が行き交う煩雑さ、政府広報の不徹底、五年前の公選法改正に際して委員会で付帯決議された選挙区選挙がいまだに実現していないことが、低迷の要因でもある。海外の各日本語新聞では「形だけの選挙制度」といら立ちの声がよく見受けられる。
 一方、海外に在住する長期滞在と永住者の邦人数は増え続け、現在、八十七万四千余人。外務省は三年後には百万人を突破するとみている。
 「外国に住んでいても、あなたの一票が国政に生かされる」。政府は、在外選挙を標語でそう説く以上、高倉さんと支援団体の奮闘を待つのではなく、手続きの簡素化をはじめ海外有権者の要望に早急に応える責務がある。選挙権の行使を保証するためにもだ。
 (編集委員・西本雅実)