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コラム 樹海

 リオやサンタ・カタリーナ州の湾や沖合に鯨が泳ぐー。のんびりと数匹が豊かで広大な海にゆったりと戯れる情景は見る人々の心を打ち美しい。その昔―。東北伯のパライーバ州の首都・ジョアン・ペッソア市には日本から進出している漁業会社があり捕鯨船を繰り出しては近海の鯨を撃ち捕り塩漬けなどにして出荷住民の人気も高かったらしい▼もう数十年近くになるけれども、あの大きな鯨を解体するところも見学した。薙刀のような包丁で捌くのも日本と同じだし手際の良さは見事なものだった。尾のところの肉が最も美味と教えて呉れたのは指導者として来ていた日本の漁師である。鯨と人とのこんな付き合いが珍しくはなく日常のことだったのに今は「捕鯨禁止」とかのお達しが独り歩きを始めて「鯨と人」の関係が断たれてしまった▼国際捕鯨委員会(IWC)の設立の趣旨は「鯨類の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展」にあったのに今や「捕鯨の禁止」に変質したのは遺憾としか申しようがない。しかも、反捕鯨国の多くは、鯨文化とは無縁な国々なのも気になる。鯨を見たこともないし、食の文化もない。ミンク鯨は南極に七十六万頭もいて商業捕鯨は成り立つの理論にも耳を貸さない▼山口県長門市には「鯨墓」があるそうだ。きちんと戒名もつけられているし、それほどに漁民らと親しい間柄だったことに目を向けたい。捕鯨は乱獲―の反捕鯨派の単純な主張に日本人はなじみ難い。そうでなければ過去帳に鯨の戒名を記録するはずもあるまいにー。   (遯)

03/10/28

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