被爆者のために往診=医師団理解示す

10月30日(木)

 在南米被爆者健康診断事業で、ブラジルを訪れている派遣医師団(山岡義文団長)は二十七、二十八両日、診察会場(援協診療所、サンパウロ市リベルダーデ区)に足を運べない人のため、往診を行った。在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)の要請に、日本側が答える形で実現したもの。今年が初めて。セーラ・グランデやイタペチニンガなど数カ所を回った。
 往診の実施について、事前に両国側で調整を進めてきた。治安上の問題から日本側が慎重な態度をとらざるを得なかったという。
 長崎県出身のある女性=イタペチニンガ=は来院する予定だった。体調を崩し、直前に往診を希望した。サンパウロからイタペチまでは片道二時間三十分ほどかかるため、日程的に厳しいかとも思われた。被爆者たちの熱意に医師団が理解を示した。
 出身県の医師に診察が受けられるよう配慮。お国の言葉を聞き、受診者は破顔した。向井ツタノさん(八七、広島県出身)、泰さん(六二、同上)、武憲さん(五九、同上)の親子三人は「こんな所まで来ていただき、ありがたいこと。本当に、安心しました」と喜んでいた。