コラム オーリャ!

 「宝物と言うと、これらの移住者名簿と旅券かな」。移民史料館の中山保巳前副館長は、文書史料室で史料を一つ一つ手繰りながら答えた。
 第一回笠戸丸移民で日系最初の歯医者、金城山戸の旅券。戦前、戦後の移民名簿が所狭しと並ぶ。臣道連盟、吉井壁水の描いた獄中日記など、研究価値の高い資料が収められている。
 もっとも「宝物や印象深い物といっても、十年以上向き合っていると、毎日の出来事のように感じてしまう」と十七年間の経験を感じさせる。
 史実を忠実に、伝えようとする思いは強い。同館内を施行した、丹青社の設計者に対して批判もした。「例えばコーヒー農園の展示、展示中の特殊なカンテラは殆ど無かった。来館者の目を引くような、特殊なものを展示するのではなく、庶民が使った本物を展示する必要がある」と言いきる。
 十七年間ご苦労様でした。(佐)

04/01/09