アイデア提唱=ブラジルで悠悠自適な生活を=日本の年金生活者呼ぼう

1月16日(金)

 日本での年金生活に不安を抱いている高齢者に、ブラジルで悠悠自適な生活を! そんなアイデアを兵庫県人会副会長の岸本晟さんが提唱している。考えるキッカケになったのは、昨年十月に四十年ぶりに再開した友人の一言だった。
 「実は、日本の高齢者は今後の老後の生活に不安を感じており、絶望していると言っても過言ではない」とその友人は、月額十五~二十万円の年金では生活が難しくなっていると力説。そこで岸本さんは「そのお金をブラジルで使えば、悠悠自適な生活も不可能ではない」と考え始めた。
 その友人は兵庫農科大学(現神戸大学農学部)時代の同級生で、二人とも拳法部に所属し、防具をつけて殴る蹴るの稽古をした仲。その後、岸本さんは学生移住連盟の第二次南米実習調査団として渡伯、移住した。以来、実に四十年ぶりの再会だったそう。
 友人は初めて訪れたブラジルにいたく感動し、「岸本君が移住した気持ちが今はよく分かる。食べ物も抱負、人も温かいし、気候は極めて良い」と褒めちぎった。
 岸本さんはさっそく調査を開始。日本人の年金に対する意識調査を見て愕然とした。〇一年十一月に生命保険文化センターが日本全国の四千百九十七人に実施した調査では、(1)まかなえると思う=一九% (2)わからない=五・三% (3)まかなえるとは思わない=七五・八%だった。
 四人のうち三人が年金生活を不安視。年金生活に絶望していると言っても過言ではない、という友人の言葉を裏付けるようなデータだった。さらに年々老齢人口は増加する。「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所二〇〇二年発表)によれば、日本の高齢人口は二〇二五年に総人口の二八・七%に、二〇五〇年には三五・七%(三人に一人以上)にもなるという。
 月額十五~二十万円の年金は、レアルに単純換算すれば四千五百~六千レアルであり、夫婦で十分裕福な生活ができる金額だ。しかも、ブラジル政府にとっても外貨獲得の手段となる。岸本さんは計算した。もし十万人の定年退職者が月額二千ドルを送金すれば、年間二十四億ドルの外貨獲得となる。デカセギ送金に匹敵する金額だ。
 フィリピンなどでは国家戦略として日本などからの定年退職者受入れを考え、余暇退職庁を創設して、海岸の風光明媚な観光地に余暇退職者村を建設しているそう。
 ブラジル政府も、外国人で二千ドル以上の年金をもらっている人には永住ビザを発行している。そこで岸本さんは考えた。交通が便利で援協診療所もあり、日本食材も豊富な東洋人街に高齢者向けの集合住宅を建設、または日系病院もあり日系団体も活発に活動で、気候が温暖なアチバイア市などにコンドミニオ・フェッシャードを作るなどだ。
 もしそうなれば、旅行会社、日本食レストラン、不動産だけでなく、さまざまな産業が活性化する。
 ただし、外国人を狙った犯罪や言葉など問題は山積しており、困難な局面は簡単に予想される。そこで岸本さんは「それ以上にお互いにとってのメリットは大きいのでは」と考える。
 「大事なのは、お金儲けではなく、恩返しの発想で取組むことです。実際我々は県人会やJICAなどを通して、日本の税金のお世話になっている」と熱く語る。「私のアイデアを叩き台にして、どなたか具体化してほしい」と岸本さん(電話11・270・0025)は呼びかけている。