何のための県人会か?=連載第1回=宮城県人会=定期総会を突然中止=会員が通知不備訴え=苦境に立つ中沢会長

1月27日(火)

 宮城県人会(中沢宏一会長)の定期総会が突然、中止となった――。二十五日午後一時から北海道交流協会で開かれる予定だったが、県人会の月報に記載された定期総会召集通知のポ語部分に不備があるとの佐藤八朗さん(会員)の弁護士を通した訴えにより、中沢会長は二十三日(金)に中止の決断を下した。県連会長再選を公言する中沢会長にとっては、県人会会長職は絶対に押えたい要職だ。午前中に新会館建設定礎式をしたばかりのお祝い気分の中、まさかの〃お家騒動〃…。執行部にとっては、お神酒のほろ酔い気分を吹き飛ばすに十分な、手痛い打撃となった。なんのための県人会か? 親睦団体はどうあるべきか? 大きな問いかけを残した騒動となった。

 午前十時から、念願の県人会新会館建設定礎式を行ない、定礎式記念昼食会は北海道交流センター二階会議室に会場を移した。
 本来の定期総会の第一次召集の時間だった午後一時、執行部から総会中止の理由説明があった。佐藤さんが柿本エドゥベルト弁護士に相談し、同弁護士名で「定期総会の中止」を求める書面が二十日付けで出され、中沢会長らが県人会の弁護士と話し合った結果、二十三日(金)に中止することが決定されていた。
 「せっかく集まっていただいたのに、みなさんには誠にご迷惑をおかけしました。心より申し訳ないと思っております」。中沢会長は、定期総会のために集まった約六十人の県人を前に釈明した。
 「総会通知のポ語部分に不備がありました。定期総会は、三十日後に改めて開催されることになりました。無理に開催して、後から裁判などになるより、この方が良かったと思っています。間違いを指摘して頂いた佐藤八朗さんには心より感謝を申し上げる。今後、宮城県、仙台市とともに発展できるよう、ブラジルの法律にのっとった、抜かりのない運営をしていきたい」と中沢会長は説明した。
 会長名で当日配布された書類には、延期された定期総会は二月二十九日を予定している、とある。
 続いて、会報の編集者である鈴木運蔵さんからの釈明も行われた。「私個人の月報発行上の間違いから、大切な総会がこうなってしまったことをお詫びします」。さらに「親睦会だから、どうしてみんなで分ってもらえないのか残念です。でも、失敗は失敗として、重ねてお詫びします」。
 佐藤八朗さんを代表とする「宮城県人会を明るくする会」は声明文の冒頭にこう記す。「我々は過去、長い間、宮城県人会をより良い明るい民主的な運営をしてもらう為に、現執行部に意見忠告してお願いしてきましたが、残念ながらいまだに程遠い状況にあります。その原因はひとえに現会長、中沢宏一氏が長年にわたり会長職に居座りつづけてきた為の独断専行、非常識、倫理観、道徳観の欠如によるものと判断します」と断罪する。
 佐藤さんは続けて記す。「役員選挙があるにも関わらず、選挙推薦委員会がいつできて、役員推薦の告示もなく、選挙開催の通知も昨年十二月十九日の会報の日本語だけで、ブラジル語には説明不足なポ語しか記入されておらず、これでは会員に報告義務を怠り、この総会は成立できないものと判断した次第です」(同声明文)。
 佐藤さんは「今まで何年も、いろいろな忠告をしてきたが、まったく受け入れられなかった。このままでは会のためにならないと思い、今回の処置になった」と語る。十数年来の不満の積み重ねに火がついた。
 しかし、会合終了後、佐藤吉之助副会長は「どうして、こうなる前に、もっと我々と話し合ってくれなかったんだ」と佐藤さんに問いかけた。「こんなやり方をしたら、会員八百人に迷惑がかかるんだ。どうして話し合いで解決しようとないんだ。話せば分かるはずだ」と熱を込めて話す。
 別の副会長も訴えた。「こんなことを公にして、母県はどう思うんだ? 敬老金だってもらっているし、県人会が信用されなくなったら、どうする。みんなに迷惑がかかるんだぞ」。 
(つづく、深沢正雪記者)