コラム 樹海

 日本館を再評価する声が高まっているそうだ。日本を代表する建築家・堀口捨巳氏が桂離宮を模して設計したとされる日本館はサンパウロ四百年祭を祝って日本政府とコロニアが建築し寄贈したものであり今では貴重な文化紹介の役割をも果たしている。あの和風の建物は日本で一度建てたものを解体し運搬したものだそうだし、庭園の石や砂までも日本産と聞いたことがある▼あの建築に際しては日系社会も大変な騒ぎだった。田村幸重市議の小学校を建築しようとする案と真っ向から対立したのも懐かしい話だ。結局、日本の伝統文化をこの地に紹介したいの見解から日本館となったのだが、この裏には勝ち負け論争に終止符を打ち新しい日系社会を築きたいの願望が秘められてもいた。このために山本喜誉司氏は高級住宅街に自宅を借り内外の折衝の場にしたのは余りにも有名すぎる▼今は市民の憩いの場となっているイビラプエラ公園も四百年祭を記念したものだし、とにかく物凄いばかりの祭典だったという。日本側も大いに頑張った。吉田茂首相も外務省に指示を出し財界も官界もが全力を挙げたのは「サンパウロ四百年祭」に詳しい。展示会も開かれ陶器では浜田庄司や金重陶陽など名工の作品が寄せられもしたのである▼あれから五十年―。山本氏や宮坂国人氏。ブラジル語の名人・粟津金六氏などもすでにいない。実務を取り仕切り今も健在なのは山本氏の秘書役だった田中福蔵氏と日伯中央協会の秋山桃水氏の二人だけではあるまいか。 (遯)

04/01/27