宮城県人会・定期総会が突然中止=何のための県人会か?=第2回=批判と支持の狭間で=「こんな会潰したらいい」

1月28日(水)

 二十五日の定期総会中止を知らせる説明会で、「中沢会長は独断専行」などと批判する佐藤八朗さんの訴えを聞いた一県人、Aさんから発言の機会を求める声があがった。
 「僕はまだ参加して半年だけど」と前置きし、「親睦団体なんて言うけど、今まで親睦なんて少しもなかった。何の選挙か知らないし、誰が立候補しているのかも知らない。それを知らせないで、選挙はできないでしょ。今までもこんな状態だったんですか? こんな県人会潰したらいいよ。今までそんなデタラメやっていたこと自体、おかしいよ」と声を荒げた。
 その発言を聞き、県人会で現執行部とも、佐藤八朗さんらの「宮城県人会を明るくする会」とも一線を画す中立派、新国良二役員はマイクの前にたった。
 「個人的な意見ですが」と前置きし、「私は十四歳の時にブラジルに来た」と自分を苦労して育てた母親の話を始めた。「そんな母にとって、私からもらう小遣いと、母県からもらう敬老金(一万五千円)は、額が同じであっても、大きな違いがある。その母県からの思いやりの気持ちは、先人のご苦労への思いやりから出ているもの。その先人が作り守ってきた県人会に対し、『親睦のことをやっていない』という声、こういう場で『こんな県人会潰してしまえ』というのは、暴言だと思う。訂正していただきたい」ときっぱりと言った。
 それに対し、約六十人集まった県人の多くから、誰からともなく大きな拍手が沸きあがった。
 新国役員は続ける。
 「現役員は時には夜中の二時、三時まで残って県人会の仕事をしてきたことを知っています。役員に入って、会のために尽くしていない人が、会をぶち壊すような言動をすることには反対です」
 再び、大きな拍手が沸きあがった。
 次に中沢宏一会長が引き取った。七夕祭りは、日本の伝統行事で唯一外国に定着した貴重な催しであり、それはひとえに先人の苦労の賜物である、とし、「県人会は、誇りをもって運営している」と宣言した。
 「Aさんのお子さんは、県費留学生として県にお世話になっているでしょう。それは県人会があったからこそではないですか。それを『県人会は潰せ』なんて言っていいんですか。自分の子供がお世話になっておいて、まことに残念な発言です」。参加者の女性から「まあ、そうなの」という小さな感嘆が漏れた。
 さらに中沢会長は、「親睦をしているかどうか、それはみなさんの判断です。していると思う人は拍手をしてください」。催されるままに大きな拍手となった。
 「会を良くするための反対意見をお願いします。みなが納得するような県人会に持っていくよう、お互いに努力しようではありませんか」と同会長は演説を締め括った。
 再び、Aさんからの発言を求める声があがり、中沢会長は「もういいじゃないか」と小声でさえぎったが、新国さんらは「ちょっと話させたらいい」と押し切った。Aさんは、自分は十五年も余計に日本で働いているから、子供の留学は、その間に払った税金に対する見返りだ、と主張した。
 その声を聞き流すように、執行部は閉会を宣言し、仕出料理が振舞われた。定期総会突然中止という予想外の出来事に巻き込まれた県人らは、めいめいのテーブルで、目前で起きた〃お家騒動〃に関するお互いの意見を熱心に開陳した。
 (深沢正雪記者)