最新農業の現場へ=日系農協活性化セミナー(4)=大型潅水するグァイーラ=大豆のさび病に対処

2月7日(土)

 グァイーラ市には先進的な取組みをする日系農家が多い。一九八〇年には、山下昇さん(七一)が地域で先駆けてセンター・ピボットを導入。現在では、フランシスコ村石さん(二世)が農場を大豆の試験場として提供。昨年から大豆農家の間で騒がれ始めているさび病への対処実験が繰り返されている。
 同市の日系農家は、現在生産物の一部をカーギルなどの商社に卸すが、オルランジア農協との関係も強い。案内の植村武司さん(七四)は「オルランジア農協はス―ルブラジル(旧南伯農業協同組合中央会)ほどの規模」と明かす。かつての同市でも、コチア産業組合中央会や南伯傘下の農家が多かったが、その頃から関係は薄かった様子。「組合に頼らずに勝手にやっていた」と植村さん。独立の気風が、先進的農業を受け入れる土壌を育てた。
 センター・ピボットは一台で四十五アルケール(およそ百十ヘクタール)の円形農場を灌漑する。その腕の長さは、直径で一・二キロにも及ぶと言うから驚く。同市には二百十五台あり、かつてはブラジル一の数を誇った。植村さんによれば「セラード地域にその首位を奪われた」とのことだ。
 山下さんは、当初はフェイジョン生産に利用。「フェイジョンが調子よくて、一年でセンター・ピボットの投資分を回収できた」と懐かしむ。現在では五台所有、カフェ百五十アルケール(およそ三百七十ヘクタール)利用している。その他、山下さんは綿花七百アルケール(およそ千七百ヘクタール)、大豆五百アルケール(およそ千二百ヘクタール)を所有するファゼンデイロだ。
 百二十五ヘクタールの大豆農場は同市の中心から五キロの地点にある。村石さんは「街に近いからここが選ばれた」というが、「村石さんは篤農家だから」という仲間の声も多い。二年前から、EMBRAPAやゴイアス基金、トライアングル基金、ブレジェイロ基金、同市の要請などにより土地を提供してきた。三十一種の大豆で二百余りの実験を繰り返している。
 農場では緑の絨毯のなかに、色の異なる三層の変化が目立つ。三十日間に〇回、一回、二回と殺菌剤の散布回数を変える。殺菌剤の使用回数による植物の差は明らかだ。散布回数が多ければ多いほど、緑が強いのは言うまでも無い。農場の色は村石さんによると「実験結果は、二月六日には判明し、新聞紙面などをもって発表する予定」だそう。
 その後、同市の日系農家との懇談会が持たれ盛んに情報交換。一週間の研修が終了した。日系農家たちは、それぞれの農協で研修成果を生かす。
 さび病…始め灰褐色円形の小斑点が現れ,後に茶褐色ないし黒褐色となり,病斑部の表皮が破れて中から褐色の粉末が飛散する。発病の年次差が大きく,多発すると株は枯死し,種子はシイナ状となり減収する。
    (佐伯祐二記者=おわり)