100周年総会=疑問の残る決め方=コロニアの総意 どこに=記者の眼

4月6日(火)

 「大事な百周年の記念事業を決める会議で、ああいう風に決めていいものか、すごく疑問が残りました」と吉加江ネルソン宮崎県人会会長は首をひねる。強引ともいえる岩水マリオ専務理事の議事進行で、予想通り日伯総合センターに決まったが、その間、全く議論はなかった。
 八案の一つ、サンパウロ日本館構想を日本語で説明した吉加江さんは、「全然議論もされないなら、何のために説明をしたのか分らない」とも。
 「上原会長が大変立派な人だから、そういう人を批判したら自分がバカを見ると思って、みんな批判しないけど、このままでは日系社会はとんでもないことになるのでは」との疑問を総会の後、抱いた。
 総会に出席した菊地義治サンパウロ日伯援護協会副会長は、「事前に一カ月ぐらい、みんなで話し合って盛上げないと、コロニア全体からの応援は得られないんじゃないかな。せっかくの百周年なのに、みんながついて行かなかったら…」と残念そうに語った。
 臨時総会の後、出席したサンパウロ総領事館の浜田圭司領事に尋ねたところ、「一般論としては〃箱モノ〃に政府が援助するのは難しい」との見解を示した。「具体的な内容を見た上で、検討してみたい。日本政府にも財政事情はあるので」と、あくまで冷静な態度を貫く。
 日伯総合センター企画書には、半額は「日本からの資金協力による」としている。半額の約三十五億円もの資金援助の前例はない、と同領事は説明した。
 同企画書によれば、資金確保プランの三分の一にあたる二千五百万ドルを、不動産有価証券で調達するという。投資家向けに証券を発行し、それを買ってもらって建設資金にする訳だ。いわゆる商業ビル建設ではよくある手法だが、「記念事業」となった場合はどうなのだろうか。万が一、破産する恐れのある投資物件には、日本政府は支援しないからだ。
 もちろん総会参加者の中には、「まあ、せっかくだから彼らにやらせてみよう。きっと良い手を考えているよ」という楽観的な人もいた。
 資金を集める目途は立っているのですかとの問いに、吉岡委員長は「これからの運動の盛り上がり次第だね」と人ごとのように答えた。
 上原理事長は三月二十八日のノロエステ連合定期総会で、日伯総合センター案の説明をした折、「七千万ドルは大金です。とにかくやってみましょう。どこにそんなお金があるという人がいるが、大きな夢ですよ、時間がかかることです」と美しい言葉を並べた。
 事実上、執行部の方向性を決めている重要人物、渡部和夫文協改革委員長は三月三十一日、資金調達目途に関する本紙の問いに、「目途はたっていない」と答えた。
 つまり、承認はしたものの、第一案だけでも資金が集まるかどうか限りなく不透明だ。第四位のサンタクルース病院どころか、第二位のノロエステ連合案まで資金が回るかどうか。四案の予算総額百九億円は、コロニア史上かつてない巨額なものだ。四案を通したのは、落選した提案者の批判を避けるために、便宜的に承認した感が強い。
 誰のための百周年祭典なのか? 日本語で説明されることもなく、一般に広く議論されることなく決められた決議が、果たして〃コロニアの総意〃なのだろうか。祭典協会のやり方に疑問が残りそうだ。協力者が集まるかどうか、今後の展開が注目される(深沢正雪記者)。