コラム 樹海
日本人にとってイスラムの国々は距離的な感覚もあって遠い存在として捕らえる傾向が強いがムハンマド(マホメッド)は知っているし「コーラン」を読んだことのある人々も多い。アラビア半島に生まれ布教の輪を広げたイスラム教はアジアにも根を下ろし今や八億人近い信者を誇る世界の宗教と見ていい▼仏教やキリスト教もながらイスラムも大きくは二つの派に大別される。サウジなどの多くの国が信じるのはスンニー派であり一般的には穏健派とされほぼ九〇%の信徒が属する。もう一つがイランで圧倒的に多いシーア派であり隣国・イラクも国民の六〇%がこの派とされフセイン政権(スンニー派)からの弾圧も厳しいものがあった▼今、イラク南部の要衝・バスラ州庁舎を占拠し反米の狼煙を挙げるいるのが、このシーア派の強硬派として知られるムクタダ・サドル師を慕う支持者である。バグダットの東郊でも武装イラク人と米兵との銃撃戦が起こり七人の兵士が死亡。武装勢力側にもかなりの犠牲者が出ているそうであり、このままだと大きな武力衝突に発展する恐れもある▼これまではフセイン勢力との闘いが軸であったのだが、ここえきてシーア派との闘いが本格化すればイラク統治の難しさは一挙に高まる。尤も、イラクのシーア派の最高権威であるアリ・シスタニ師はサドル師とは厳しい一線を画している。このためシーア派の全面的な支援は得られないの観測が専らであり、あまり先行きを心配しなくてもよさそうなのだが―。 (遯)
04/04/06