日本以外の外国に住むブラジル人の生活=インターナショナル・プレス紙から=(3)=カナダへ移民7千人=高い税金、生活費が悩み

4月7日(水)

 ◆極寒の地で◆
 二年余り前、ヴェリジアーナ・モンテイロ・ステックさん(二七)は、カナダへ旅立とうと決意した。トロント市に住んでいた当時の恋人で、現在の夫のもとへ、ブラジリアから転がり込んだ。「自分が成長するような新たな目的が欲しかった。仕事に疲れていたし、カナダはすべての扉が開かれているような気がしていた」と当時をふりかえる。
 しかし、全部が計画通りには運ばなかった。就職やカナダ政府が勧める健康保険、失業手当、無料講座、社会福祉サービスなどが利用できるようになるためには、永住査証が必要だが、その取得は困難を極めた。
 気候に対しても不満が漏れる。「冬は長いし、本当に寒い。夏は数日だけ、とても暑くなる」。その上、生活費が高いことも悩みの種だ。カナダは税金と、特に冬期の除雪作業や暖房に費用がかかる。「ブラジルのように不動産や車、家具の購入、旅行、夜にショーや舞台を鑑賞するような経済状態が持てない」と不平を言う。
 言葉も多くの移民にとって壁となっている。ヴェリジアーナさんは、「カナダに行く前から、少しは話せたけれど、行ってみて、コミュニケーションをとるには不十分だと分かった。でも、六ヵ月もしたら、理解できるようになった」という。英語は簡単だが、方言が難しいとも。現在、有利な就職をするためにフランス語を学んでいる。
 リオ・グランデ・ド・スル出身のアナ・ルーシア・アラウージョさん(三二)はカナダ人と結婚、ケベック州に住んで五年になるが、同じように、言葉に壁を感じた。「フランス語を勉強したが、こちらに来た当初、何も話せなかった」。
 アナさんの夫はブラジルの大学で非常勤講師として働いていた。アナさんも同大学で代理講師として教鞭をとっていた。当時、二人はそれぞれ、博士課程、修士課程を卒業しようとしていた。「ブラジルに残ろうと努力したけど、一九九八年末、就職は非常に難しかった。二人とも、仕事の契約はとっくに終わっていた。二人でカナダに賭けてみることにして、夫がまず帰国し、四ヵ月後に私が追った」というアナさん。現在は、ケベック州のレヴェル大学博士課程で美術史の研究に専念している。
 ◆不適材、不適所◆
 国連の統計によると、二〇〇〇年、世界各地から約六百万人の移民がカナダに住み、そのうちの七千人近くがブラジル人という。現在、カナダの移民法は厳しく、労働許可がおりるまで二年も費やす。しかし、カナダ政府は年間に同国人口三千百万人の一%、約三十万人の移民を許可する政策を施行したい意向だ。
 カナダは国の発展のため、労働力を必要としている。しかし、母国で大学を卒業、または専門技術を身につけた移民たちは、自分の得意分野とはまったく関係のない職に就いている。「たくさんの大卒者がいる。なかには修士課程を修了した人も。でも、カナダ国内での経験として認められないため、仕事が得られない。彼らは生活のため、仕方なく専門外の職に就いて、欲求不満に陥っている」とヴェリジアーナさんは語る。
 清掃員やベビーシッター、美容師、飲食店従業員、土木作業員などブラジルでは下層階級とみなされる仕事でも、カナダでは高給職だ。「時間をかけ、経験を積めば、もっとお金が手に入るチャンスがつかめる。でも、そのためには我慢をし、何でもやる気にならないといけない」とヴェリジアーナさん。
 多くの移民ははじめに、学生として入国し、その後、移住のための申請をする。まず、大都市で仕事も見つかりやすいモントリオール市に行くらしい。アナさんは、個人的な意見と前置きして、「カナダはお金を作る場所ではない。カナダの最低時間給は七・五〇加ドルで、アメリカの六米ドルの価値しかない」と述べている。
(つづく)

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