100周年「文協ビル売却」?=吉岡発言に援協憤り=「理想ばかり 現実知らない」=祭典協会への批判噴出

4月8日(木)

 三日に開催されたブラジル日本移民百周年祭典協会臨時総会時の、吉岡黎明プロジェクト委員長の発言「文協の建物を売却するかもしれない」が波紋を呼んでいる。百周年記念プロジェクト四案の事業規模総額は百九億円…。八十周年記念事業で日伯友好病院を建設した時、サンパウロ日伯援護協会は十五億円もの資金を集めたが、その時の苦労から、七日、和井武一会長は「一億円集めるのがどれだけ大変か。そんな額は理想論であって、現実的には厳しいでしょうな」と語った。各方面から、同祭典協会のやり方を巡って、異論が湧き出ている。

 「今の文協役員の方々は、全然コロニアの歴史を知っておられないですね」と援協の山下忠男事務局長は憤る。一九六七年末に日本政府が「皇太子殿下ご来伯記念講堂」への補助金を許可した時、記念講堂下部のスペースを援協診療所として百年間無償貸与することを条件としており、その書類も残されている。また、援協では五階の半分を購入して事務所にしているにも関わらず、「何の相談も受けていない」と語った。
 「売却とかという話は、うちだけでなく、救済会やエスペランサ婦人会など、購入している団体や賃貸している団体を集めて総会を開かなくてはおかしい」。
 吉岡委員長の売却説には無理がある、との反論だ。
 一九八八年に、移民八十周年記念事業で日伯友好病院が建設された時、和井会長らは十五億円もの資金を集めた。八億円は日本から支援で、残りはコロニアで集めた。
 「自腹で何回も、何回も日本へ行って頭を下げて回りましたよ。一億円集めるだけでもどれだけ大変なことか。いろんな縁故を頼って、ようやく集めた八億円でした」と述懐する。
 今回の百周年記念事業の総額が百九億円と聞いた和井会長は、「そんな額は理想論でしょう」と断じる。「まあ、上原会長がよほど頑張らない無理だね」。上原会長は一期限り、来年は会長職を下りると公言している点を伝えると、「はっはっはっはっ。じゃあ、どうかな~」と苦笑した。
 「ひょこっと行って『百周年です』といったところで、お金出してくれる人がどれだけいますかね。こりゃ、大変だな。長い付き合いがあってこそ、話を聞いてくれるものでしょ」。
 三階奥に賃貸するサンパウロ人文科学研究所の宮尾進元所長は、「今の百周年はやり方がまずい!」と警告する。「このビル売却なんて、何の話も聞いてない。記念事業だって、ずいぶん前から根回ししていないと、決めたはいいけど、資金が集まらなかったら何もできない」と手厳しい。
 「そんなことやってる暇があったら、文協自身を立て直さなきゃという声も聞いている。肝心の移民史料館(吉岡氏が史料館運営委員長)だって、何にも改革が進んでいないのに」。
 それに対し、吉岡委員長は、「文協ビル売却という話は、僕が個人で勝手に言ってしまったこと。理事会で具体的に話合われていることじゃないです」と言い訳する。文協副会長でもある吉岡氏の発言だけに、〃個人〃といっても影響力は大きい。
 日伯総合センターについての詳細が全然広報されていないが、との問いに「まあ、そういうこともありますね」と気の抜けた答えを返した。三日の臨時総会で質疑応答や議論もなく強引とも言える採決をとったことに関しては、「百周年は今までズルズルとやってきてしまったでしょ。動き出したのは、我々が入ったこの一年ですよ。みなさん集まらないのは集まらない理由があるんだろうけど、みんなの考え方を一致させるのは簡単ではない」と自己弁護した。
 できるだけ雰囲気を盛上げて、協力を集めようという意思に欠けるようだ。宮尾元所長は言う。「このままじゃ、きっと百周年は祭典だけ、ってことにもなりかねないね」。
 このままでいいのか、百周年。