コラム 樹海

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 その昔。保利茂氏という政界人がいた。戦前の報知新聞や東京日日の記者として活躍し昭和十九年に衆議員となった党人政治家であり戦後は吉田内閣の閣僚を務め佐藤栄作氏を支えた。衆院議長にも就任したが、佐藤政権の官房長官として政局を乗り切った力量と手腕は今に語り継がれる。在任期間は歴代一位だったが昨日の七日―記録は福田康夫・官房長官によって塗り替えられた▼最近では中曽根首相の名女房役だった後藤田正晴氏がよく知られる。どちらかと言えばハト派に属し首相の強硬論とは度々ぶっつかり意見を異にしたけれども、官房長官としての任務は立派すぎるほどに立派の評判だった。この後藤田氏によると、官房長官の仕事の内容は法的にはっきりとはしていないらしい。従って―長官になってからの個人的な裁量が物を言うようなのである▼この難しい仕事を森喜朗首相に命じられ小泉政権になっても続投し一二五九日も果たしたのは大したもので評価したい。言うまでもないが、森氏や小泉氏の師匠である福田赳夫元首相の子息であり、政治家としても決して古くはない。それがイラク特措法を始め自衛隊の派遣という困難な行政を一手に引き受けての遣り手ぶりはもっと褒めてもいい▼官邸主導の外交や近頃では「影の首相」の声もあり「郵政と道路公団民営化」の実現には無くてはならぬ政治家と見ていい。ご本人は「いつの間にやら」と口にしているけれども北朝鮮との折衝にも欠かせない人であるのは間違いない。    (遯) 

04/04/08