教科書 時代を移して変遷(27)=教師を育成、支援=日本語センターの役割

5月21日(金)

 給与が安いと教師のプロ意識が低下、自己トレーニングをしない。その結果、授業が面白くないといって、生徒が学校を辞める。学校は生徒数を確保しようと、月謝を高く設定しない。
 コロニアの日本語教育は、そんな状況にあるとよく言われる。教師養成を支援することで悪循環を断ち切ろうというのが、関係者の一致した認識だ。
     ◇
 汎米研修(ブラジル日本語センター主催、JICA後援)が今年七月に、実施される。
 開催時期は例年一~二月だった。年始は様々な行事とぶつかるため、半年前倒しで実施。関係者は「今年の汎米には、本当に力が入っています」と胸を張る。
 若手のレベルアップに目標を絞り、日本の各種研修に連動させていきたい考えだ。
 これまで、日本から講師を招いていた。今後は現地だけで講師陣を固める。中南米の日本語教育が自立出来るのかどうかが、試されることにもなりそう。
 ブラジルとアルゼンチンで毎年交互に主催されていたのを、開催地はブラジルのみとし、知識の蓄積を図る。
 企画段階で、中元司郎氏(海外日系人協会専門嘱託)が来伯。約二週間滞在して、実行委員の指導に当たった。研修当日には評価のため、専門家が派遣される予定だ。
 中元氏は帰国する直前、成功の鍵について、こう見解を示した。
 「講師に選ばれた人たちが浮かび上がり、批判の対象になるはず。組織が先生をきっちり、支えることが出来なければ、後継者は育ちません」
     ◇
 ブラジル日本語センターには教師や学校、日本語教育機関など雑多な個人や団体が入会。組織の全体的な性格がぼやけているような印象を与える。
 「お客様はいったいだれなのか」
 谷広海氏(宮崎県出身)は理事長就任(〇二年四月)以来、同センターのあり方について関係者たちと討議。教師の育成に力を注いでいくことを鮮明に打ち出した。
 同理事長は「センターは先生たちのために存在しているもの。会費に見合った手伝いを、我々がしているのかどうかを考えていきたい」と強調する。
 外に開かれた空間づくりを目指し、まず建物の改築に手をつけた。職員の教育にも力を入れ、5S運動(整理、整頓、清潔、清掃、躾)を展開するなど、来館者への応対を改善させた。
 「組織をひとつの企業のように捉え、効率的な維持運営にこだわった」と谷理事長。
 役員のトップに現役の経営者が目立つのは、同センターの特長だ。一期目(〇二年四月~〇四年三月)には、リフォームなどに出費したにもかかわらず、経済的なゆとりが生まれたという。 
 二期目(〇四年四月~〇六年三月)に入った今年は、組織改革を加速化させていく考えだ。
 そのひとつが教師会の立ち上げ。作文コンクール、ふれあいセミナーなどの事業を管轄させ、各部を独立採算方式で運営する。
 経済的な自由を与えることで、教師の自主性を促すのが狙い。「採算が取れるようになれば、新しいイベントに乗り出すことも出来ます」と谷理事長は得々と語る。
 一方で、増収が見込めない事業も存在。担当者は「切り捨てられるのだろうか」と気を揉む。
 これに対して、谷理事長は「収入のない部門に対しては、センターがきちんとサポートします」と理解を求めている。  
 既に、会計担当の職員を雇用。細部の調整に入っている。つづく。        (古杉征己記者)

■教科書 時代を映して変遷(1)=教育勅語しっかり記憶=イタペセリカ 今も「奉安殿」保守

■教科書 時代を映して変遷(2)=国粋主義的思想〝植え付け〟=満州事変後の日語教育

■教科書 時代を映して変遷(3)=ヴァルガス政権発足で=日語教育は〝地下活動〟

■教科書 時代を映して変遷(4)=戦後に一、二世の〝亀裂〟=それでも日語教育は消えなかった

■教科書 時代を映して変遷(5)=人間教育を重要視=『松柏』の川村さん=「戦前の教科書に夢があった」

■教科書 時代を映して変遷(6)=いち早く日語教育理念=アンドウさん=〝コロニア向け〟の必要説く

■教科書 時代を映して変遷(7)=〝コロニア教科書〟作製しても=外国語教育令が足かせ

■教科書 時代を映して変遷(8)=科書時代を映して変遷=『日本語』8巻61年完成=翻訳して当局の検定受ける

■教科書 時代を映して変遷(9)=保護者の矛盾した意識=日本語教育は必要=教師月謝は上げぬ

■教科書 時代を映して変遷(10)=初訪日研修員がつくった=『にっぽんご かいわ』=2つのレベルで

■教科書 時代を映して変遷(11)=初訪日研修員がつくった=『にっぽんご かいわ』=2つのレベルで

■教科書 時代を映して変遷(12)=日伯文化普及会が産声=早い時期に認識=日本語教育は外国語教育

■教科書 時代を映して変遷(13)=日語学校の生存競争=激動90年代、学習者減る

■教科書 時代を映して変遷(14)=日本語能力低下に対処=文協が講座を開設

■教科書 時代を映して変遷(15)=高評価、よく売れる=橿本さんの『きそにほんご』

■教科書 時代を映して変遷(16)=視覚に訴えるテキスト=現代っ子のニーズに合わせて

■教科書 時代を映して変遷(17)=州立校では初の試み=レジストロ日本語が選択科目に

■教科書 時代を映して変遷(18)=USP日本語講座開設=客員教授ら文法入門を刊行

■教科書 時代を映して変遷(19)=USP、やりにくい日本語授業=学生の出発点異なる

■教科書 時代を映して変遷(20)=〝応急処置〟的な役割=デカセギ向けに会話ブック

■教科書 時代を映して変遷(21)=デカセギ向け講座開設=CIATE=必要に迫られ毎回満員

■教科書 時代を映して変遷(22)=帰国子女を受け入れ=イタマラチ学園=日本の国語教科書採用

■教科書 時代を映して変遷(23)=教材に童話『シンデレラ』=基金、教師養成を支援

■教科書 時代を映して変遷(24)=レベル異なるから複式で=日本語学校の“宿命”

■教科書 時代を映して変遷(25)=文協日語校が現地校に=インダイアトゥーバ=生徒増、地域貢献ねらう■教科書 時代を映して変遷(26)=「アンブレラ方式」支援=JICA、効率増進を検討