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自分史書き残すため 老ク連ですでに七冊完成 「書き終えて善い顔」嬉しい、シニアの安達さん

6月8日(火)

 ブラジル日系老人クラブ連合会で活動中のJICAシニア・ボランティア安達正子さんは、会員たちに、自分史を書き残しませんか、と老ク連の会報「ブラジル老壮の友」(二月号)を通じて呼び掛けた。いくつかの反響があり、これまでに七冊が完成した。
 ブラジルに来て間もなく老ク連芸能祭のバザーを手伝った安達さんは、日本語の本を買っていく人の多さに驚いたと同時に、日本語を読む世代はだんだんと減っていき、彼らのことがやがて忘れられてしまうのでは、と感じた。「なんとかこの世代が生きてきた記録を残しておきたい」と考え、子や孫たちが自分の家のルーツを知りたくなったときに説明できるように自分の生きてきた道を記して残してもらうことを思いついた。
 会報で呼びかけたところ、中には千ページにも及ぶ日記を持ってきた人も。受け取った手書きの原稿を安達さんがパソコンで打ち直して本人に渡すと、完成した自分史を受け取った方々から「寝る前にいつも読んでいます」「涙が出るほど嬉しかった」など喜びの声が安達さんに届く。コピーして家族や知人に配る人、日本の親戚に送る人も多く、本人だけでなく家族も自分史の完成を喜んでいるそうだ。
 「原稿を持ってきたお年寄りたちが、なんとも言えない善い顔をなさるんです」と、安達さんは何度も繰り返す。後世にまで消えないものを残すことができた安心感、残された人生を新たに始めようとする活力、お年寄りのそんな輝きが顔に表れているのだという。「あの顔を見られただけでも、やって良かったと思えるんです」安達さん自身も嬉しそうに語る。
 問題は、これからの世代にはポルトガル語しか読むことができない人が増えていくこと。ポルトガル語に翻訳したものを併せて綴じることができたらなお良いが、安達さん一人ではそこまで手が回らない。
 「(自分史を)書き終えた満足感がみなさんの生きがいに繋がれば」と話す安達さんは現在八冊目の製本に取りかかっている。
 

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