先人もうかばれない=移民の日=県連、慰霊祭で紛糾=来年は文協法要と併合?

 6月16日(水)

 もう一度考えよう「移民の日」のあり方を――。十八日の「移民の日」にサンパウロ市各地で開かれる各種式典が、様々な波紋を呼んでいる。日本都道府県人会連合会が主催する開拓先没者慰霊祭は、中沢宏一会長が、担当する委員会を「委員会が式典をきちんと実行してくれるかどうか分からない」などとニッケイ新聞社を訪れ、異例の批判。これに対し、委員長側は「元々、執行部の独断が原因。ただ、今回はきちんと責任を持って担当する」と反論する。委員会が定めた式典開始の時間を中沢会長が独断で変更したのが、混乱のきっかけだという。また、厳しい時間スケジュールの中、サンゴンサーロ教会、イビラプエラ公園、文協の三ヶ所で追悼行事を行ってきた「移民の日」のあり方についても、出席者の減少が顕著になっている昨今の状況から見直しを迫る声が上がっている。
 式典が目前に迫るも関わらず足並みが揃わない県連――混乱の始まりは、先月に行われた代表者会議だった。尾西委員長の代理を務めた石川準二副委員長は、従来行われていた仏式に慰霊祭を戻す、との委員会の方針を提案。「本来、慰霊碑は静かに奉られるべき場所。そういう所で、お祭り騒ぎはおかしい」というのがその理由だ。
 これに対し、吉加江ネルソン宮崎会長らが「せっかく子供たちを招いた形式にしたのに何故」などと猛反発。結局、多数決の結果、委員会の提案は否決され、従来どおりの開催に落ち着いた。
 これを受け、尾西委員長らは今月七日に改めて委員会を招集、中沢会長も出席した会合では、慰霊祭当日には午前九時からサンゴンサーロ教会でミサが行われることも考慮し、午前十時十五分に開催することを決めた。しかし、後日県連執行部は、委員会に相談することなく、午前九時四十五分に式典を始める、と関係各所に通知している。
 尾西委員長は「せっかく委員会で決めたことが無断で覆されるなら、委員会の存在は無駄。それなら執行部に任せようということ」と不信感を示したが、中沢会長は十四日にニッケイ新聞社を訪れ「委員会が我々、執行部に(慰霊祭を)やらせようとしている」などと困惑した態度で語った。
 一方の尾西委員長はニッケイ新聞の取材に対し「今回は最後まできちんとやる。明日、もう一度委員会を招集して皆に態度を徹底させる」と明言した。
 「開かれた形式」を謳い、二年前に仏式の枠を取り払うことが決まった県連の慰霊祭。昨年は、数多くの子供たちが参加したり、出席者が「ふるさと」を大合唱するなど表面的には盛り上がりを見せているが、日系社会以外からは「どうしてイビラプエラ公園という公共の場で、日系人だけが宗教色の強い式典をするのか」と異論が挙がっているのも事実。こうした事情もあってか、サンパウロ市役所が、同公園から慰霊碑を撤去させたいとの噂が持ち上がっているという話もある、と関係者は指摘する。
 ただでさえ求心力が低くなっている「移民の日」の各種行事を出来るだけ、一本化してはどうか、との意見も出されている。
 ブラジル日本文化協会の松尾治副会長は、十八日午後、文協大講堂で行われる仏式大法要に県連も合流してもらいたい、との意向を語る。「公園内で仏式にしろ、カトリックのミサにしろ、いずれも禁止だと聞いている」。松尾副会長は、事実関係を確認の上、来年度から県連に参加を呼びかけたいと考える。
 九十六回目を迎える移民の日。日系社会の礎を築いた先人に敬意を払うという本来の目的に立ち返り、日系各団体が歩み寄りを見せない限り、より形骸化が進むことは間違いない。