パ国ラパス日系農業者=増収見込める産品を=サンパウロ市近郊農・工場視察=地元の失業対策兼ね

7月2日(金)

  パラグアイのイタプア県ラパス市で大豆・アガリクスを生産するグループ有志十三人が六月二十九日から今月三日までサンパウロ市近郊の農場を訪ね、花卉やシメジ栽培、プロポリス製造業の現場を視察している。この訪問は、イタプア県農水産局顧問と、JICA第三国専門家でモジ市在住の野澤弘司さんの協力で実現した。
 六月三十日は、モジ市近郊の花岡農場でヒメマツタケと、シメジ栽培を見学。その後同市のMNプロポリス社へ。アルジャ市の荒木花卉園ではラン栽培を視察した。一日はセアザ(サンパウロ州中央卸売市場)やカンタレイラ市場、アグロ・ニッポ社の日本食品加工工場。二日はサントス市のイマイ・ペスカ社で水産物加工工場を視察した。
 ラパス市は人口三千四百人のうち、日系人七百人を数え、多くが大豆や小麦の大型農業に従事、成功を収めている。平均耕作面積は三百ヘクタールを誇る。
 ただ、問題もある。機械化農業で収益を上げている日系人と、現地パラグアイ人との収入格差だ。背景には、植え付け期と収穫期以外の時期は、現地労働者が失業し収入が激減する現実がある。将来、両者の間で摩擦が生じる可能性も心配されており、今回の視察では、その失業対策として、増収に繋がりやすい農作物を探るほか栽培方法も研究するつもりでいる。
 団長の宮里伝さん(51)は「機械化農業で日系人のみが、裕福になってきている。将来のあつれきを防ぐためにも、パラグアイ人に小資本でできる仕事を供給したい」と語る。
 本森裕明・ラパス農業協同組合理事は「来年で入植五十年。自分たちが食べる米作りから始めた入植当時は、アスンシオン市近郊での野菜栽培やアルゼンチンのブエノス・アイレス市近郊の花卉栽培へと出て行った人がほとんど。初期入植者はいま、三〇%くらいしか残っておらず、結束は固い」と、現地日系社会の事情を説明した上で、「移住地で働いているパラグアイ人の雇用促進を目指す。収入増加のための農作物をゆくゆくは移住地の特産品にしたい」と意気込む。
 また、大豆・アガリクス生産者グループのコーデネイター、田岡アンドレスさんは「イタプア県でよく知られている野澤さんの協力で、興味深い農場や工場を視察でき感謝している。ブラジルとアルゼンチンの大国に挟まれて、余り知られてないパラグアイですが、のどかでいい所。我々二世はパラグアイ生まれで、パラグアイ人ですが、日本人の得意分野である農業で、国造りに貢献したい」と重ねて強調した。
 今回の中心メンバーは大豆・アガリクス生産者グループの主要メンバー九人でG9(九人の有志会)を構成している。問い合わせは電話595・763・290052。住所はCasilla de Correo No4 Distrito de la Paz Itapua Paraguay.