「大票田」の看板倒れ=聖領事館、2千人割る=初の公館投票「お寒い」結果=予想の三分の一以下

7月6日(火)

  初の公館投票は低調な結果に――。先月二十五日に始まった参院選の公館投票は三日、九日間の投票期間を終えた。ブラジル国内八ヶ所の投票総数は二千六百九人を数え、ポルト・アレグレ総領事館など各地で昨年の衆院選の投票数を上回ったが、初の公館投票を実施したサンパウロ総領事館は千九百九十九人と低迷。事前のアンケートなどをもとに同総領事館が弾き出した約七千人の予想を大幅に下回った。政治への無関心さが高まる母国では、過去最低の投票率でも四四%――。郵便投票数を除くとはいえ、「大票田」のサンパウロ総領事館管内で一七%の投票率に留まった事実は、改めてコロニアの「政治離れ」を象徴した。

 在外選挙権が認められてから四度目で初めてとなるサンパウロ総領事館での公館投票。手続きが煩雑な上、自費で郵送するなど負担が大きかった郵便投票との併用になるだけに、関係者は高い投票率を期待していた。
 同総領事館では約一年前に、総領事館から百キロ以内に住む有権者を無作為に抽出。三百人を対象に「公館投票が実施されれば、足を運ぶか」などと事前調査をしていた。約八〇%が、「公館投票なら行く」と回答したことに基づき、七千人が今回の参院選で投票すると見込んでいた。
ただ、現実的には遠隔地在住の有権者が足を運ぶことは想定しておらず、百キロ圏内に住む約七五%の有権者、つまり約七千五百人が公館投票の対象と考えていた。そうなると事実上の投票率は約二五%となる。
 初日の六月二十五日には期間中最多となる二百六十八人が投票したが、九日間の合計はわずか千九百九十九人どまり。郵便投票を選択する有権者もいるが、公館投票に限れば、一七・二%と極めて低い結果に留まった。若者を中心に政治離れが懸念される日本でさえ、前回衆院選では五六・四%の投票率を残していることを思えば、世界最大の有権者を誇るサンパウロの投票率は極めて低調だ。
 サンパウロ総領事館でも、初めての公館投票を盛り立てようと、邦字紙に広告を出し投票意識を盛り上げを図ったが、効果があったとはいい難い。
 担当する西山巌領事は「六月中旬と公示直前に全有権者を対象に、案内の手紙を送付したのだが……」と言葉少なげだ。
 少しでも「快適な投票を」と用意された三百人収容の待合室も、初日に約百人が利用しただけで、残る八日間は「お役ごめん」。次回からは千九百九十九人という今回の投票数をもとに、会場設置やスタッフの配置に取り組むという。
 「予想の三分の一の結果に終わったが、期間中事故もトラブルもなく順調に終わったことは成果。当地での事情がよく分かりました」と語る西山領事。期間中には、駐在員や学生など若い世代の投票がほとんどなかったことから、今後有権者を年齢別に分析し、今後の投票行動の参考にすることも考えているという。
 一方、サンパウロ総領事館以外の七公館中、六公館では前回の投票数を上回った。唯一、クリチーバ総領事館で六人減少した。
 初めての公館投票初日の様子や、高倉道男氏の遊説などコロニアの選挙事情を取材した時事通信社の市川亮太サンパウロ支局長は、「政治への無関心が叫ばれて久しい日本でも、前回は五六%の有権者が国政に参加したことを思えば、当地(サンパウロ)の投票率は『お寒い』の一言」と語る。また、国政選挙は日系社会の意思表示のチャンスと指摘する市川支局長は、あえて手厳しく言えばと前置きした上で、「こうした機会に意思表示しないと、母国から忘れ去られても文句は言えない。百周年までにある選挙で、せっかくの権利を行使して欲しい」と意識改革を促す。