エンブラツール=日本人客誘致狙いセミナー=「風呂必要」「食事には魚を」

7月7日(水)

  メルコスール地域の観光地に日本人旅行者を積極的に誘致しようと、エンブラツール(ブラジル観光公社)は五日午後、国内の業界関係者ら百人あまりを招きセミナーをサンパウロ市内のホテルで開催した。JICAが技術サポートなどで後援。特別講師として、日本交通公社の梅川智也研究調査部次長と、立教大学観光学部の溝尾良隆教授が講演し、日本人顧客の特性を具体的に紹介しながら、日本市場向けツアー商品を企画する際のヒントをアドバイスした。
 〇二年、旅行などで国外に赴いた日本人は一千六百五十万人。統計では六十歳以上の中高年と、三十歳代の女性が最も多い。八割以上がパックツアーで、長くて七日から十日ぐらいの日程がほとんどだ。
 そのうえで、梅川氏は「日本独特の旅行形態として、母親と娘だけでツアーに参加する人が結構いる。会社人間であった夫は退職後、妻と旅行がしたいが、妻の方は、旅行しても夫と話が合わないため、娘や友人との旅行を選ぶ傾向にある」と語った。
 続いて、日本人旅行者の受け入れ時に気を付けたい点が挙げられた。「バスタブのないホテルでは、後からかならず苦情がくる。毎日お風呂に入る習慣のある日本人は、シャワーだけでは満足できない」。食事では「あっさりとしたものに慣れ親しんでいる日本人には、昼も夜も肉類の料理では飽きてしまうので、魚介類レストランやイタリアレストランを準備する方がいい」などと助言した。
 一方、溝尾教授は「南米へのツアーでは、必ずイグアスーの滝見物が入り、ペルーのマチュピチュやクスコ見学も人気がある。メルコスール地域まで、日本人旅行者に来てもらうには、時間に余裕のある年金受給者をターゲットにした趣味・教養関係に絞り込んだツアーが今後伸びるのでは」と示唆。
 日本でいま、パラグアイのハープであるアルパが注目されている事情を紹介し、「アスンシオンの名物レストランでアルパ演奏を聞きながら郷土料理を楽しむ。イグアスー見物に加えそんな企画があれば、アルパ・ファンも呼べるのではないか」とした。
 また、南米地域がワインでも注目されていることを受け、ワイン愛好家を対象にしたツアーを提唱、「チリでは海産物料理にチリ産ワイン、アルゼンチンではタンゴを聞きつつ肉料理にアルゼンチン産ワイン。そんな企画もあるだろう」。
 さらに、溝尾教授は南米の音楽、古い建築物といった特定のテーマを巡る旅行についても触れ、その場合にも「メルコスール諸国にまたがったツアーが必要だ」と語った。
 JICAでは、日本人観光客の誘致を見据えたメルコスール地域観光振興のため昨年から、各国に技術サポートやセミナー開催などに協力してきた。
 ブラジル事務所の柴田ヨシノリ氏は「今は準備期間。協定成立後は五年間継続する」と話している。