聖支所長 異例の長期不在=機能縮小の前兆か=事情通「日系向けに特化も」=JICA

7月15日(木)

  国際協力機構(JICA)サンパウロ支所の小松雹玄前支所長が今年六月にブラジル事務所所長に転任後、サンパウロ支所長が不在という異例な状態が続いている。昨年十月に、特殊法人等の合理化計画を受けて、独立行政法人に改編。それに伴なって、ブラジルで法人登録を申請中だが、日伯両国間の折衝が遅れているためだとみられる。小松所長が支所長を兼任。石橋隆介次長が代行して、日常業務をこなしている。一部では、支所の縮小説も流れているようだ。

 旧国際協力事業団(同機構の前身)のブラジル現地法人、ジャミック移植民有限会社とジェミス信用金融会社は、ブラジル民法に抵触するとして一九八一年九月に閉鎖。これ以後JICAの職員は、形式的に在外公館の職員として扱われてきた。
 組織改編で、外務省との関係がこれまでに比べて希薄化。在外公館の傘の下で、事業を展開していく形に疑問が持たれるようになった。
 石橋次長は「日本語の名称も変わったことだし、公式に仕事をしていきたい。そのほうが、JICAのPRにもつながる」と法人格取得に向けた意図を説明する。
 直接的な交渉は、大使館とブラジル協力機関(ABC)との間で進められている。小松前支所長が今年六月に、ブラジル事務所所長に転任したため、サンパウロ支所長の椅子が空席になってしまった。
 後任人事について、石橋次長は「東京(本部)からの連絡がまだ、入っていないので、それ以上のことは答えられません」と明言を避ける。同様の問題を抱えている国が、ほかにも存在。ブラジルが特異ではないことを強調する。
 一方で、そもそも人選自体が、行われていないという憶測が出始めているのも事実だ。「現地採用の中から、責任者を選ぶんじゃないか」という極論もある。
 「一国一事務所」は、JICA改革プランの目玉の一つだ。サンパウロ事務所は昨年一月から支所になり、ベレーン支所は今年三月三十一日付けで廃止され、新たに「アマゾン環境プロジェクトオフィス」が発足した。
 「サンパウロは海外最大の日系社会を抱えているので、撤廃ということはないと思う。しかし、日系向けの機能だけ残して、後はブラジリアに移るといったことは考えられます」。内部の事情をよく知る人は、そう懸念をもらす。
 サンパウロの事業規模は、年間三億五千万円。ブラジル全体の約半額を占めている。支所長不在という前代未聞の事態は、議論を呼んでいきそうだ。