〃困窮〃精神障害者の受け皿は? 施設がない、頭痛い援協 当局の監督厳しく 老人ホーム、もう預からない

7月17日(土)

  「私たちの移転先はどこになるの?」。サンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)は、四十歳~六十歳までの精神障害者で経済的にも恵まれていない患者を老人ホームに斡旋している。高齢者と精神障害者を同一施設に収容させることについて、行政側の監督が徐々に厳格化。将来、別の施設に移さなければならない可能性もある。しかし、困窮者向けの受け皿はほとんどないのが現状だ。
 「もう、うちでは預かれないかもしれない」。非日系人経営の老人ホームから援協に最近、そんな電話が入るようになった。
 保健衛生局の締め付けが強くなり、六十歳未満の精神障害者は入所出来なくなりそうだという。「老人憲章」が昨年制定されたこともあり、質やサービスの改善が求められている。
 援協の担当者は「精神障害者とお年寄りが〃同居〃していることについて、行政側はこれまで黙認してきた。でも、だんだんそれを許さなくなってきているようです」と明かす。
 精神障害者施設は医学的な治療を目的にしており、入居費が割高になってしまう。そのため、経済的な余裕がない患者が老人ホームに入ることもある。
 看病疲れをした親族にとっても、世話を焼いてくれる存在があるという意味では好都合。援協も苦肉の策として病気が慢性化、回復の見込みのない患者を老人ホームに紹介してきた。
 取り扱い中の件数は現在、十人を下らない。新たな受入先は、容易に見つかりそうもないという。「民間にもピンからきりまである。困窮者だからといって、劣悪な施設を勧めるわけにもいかない。かといって、公共の施設が多いとも言えない」からだ。
 援協は、精神障害者のために「やすらぎホーム」を運営している。あくまで社会復帰出来る人が対象。「慢性化した患者さんは暴力を振るったり、自殺未遂を起こすことがある。もし施設から逃亡し、近くのファベーラにでも迷いこんだら大変です」
 もちろん、今直ちに対応を迫られるというわけでない。担当者は「本当に頭の痛い問題です」と表情を曇らせている。