医療保険料上がる心配=援協に安価なプラン相談=「未加入状態は怖い」=60代後半の日本語教師収入の半分を支払う

7月21日(水)

  ブラデスコとスール・アメリカが医療保険の調整を求め裁判で争っている件で、他社の保険料も値上がりするのではないかと、日系社会で波紋が広がっている。経済的なゆとりが無かったことなどを理由に、若い時から保険に加入してこなかった移民一世が少なくないからだ。六十歳以上の新規加入は、月の保険料が最低でも四百レアル。通常は千レアルになるといわれ、高齢化の進むコロニアでは社会問題に発展しそうな勢いだ。
 「保険料がこれ以上高くなってしまうと、もう払えません。安価なプランがあったら紹介してほしい」
サンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)には、ここ数日そんな相談が絶えない。
 ブラデスコとスール・アメリカが、保険料を最大八二%アップさせる意向を提示。これに対して、政府が調整率の上限を一一・七五%まで、とはねつけたため、司法の判断に委ねられることになった。
 医療保険の現状や法令などについて、メディアが取り上げたこともあって、日系人の関心を引いた。スール・アメリカに加入している女性(一世、五十代)は「えー!夫婦で千五百レアルを超えてしまう」と目を丸くする。
 六十代後半の別の女性(日本語教師)は「〃安心料〃と思って、入っています。収入の半分くらいを医療保険に支出しているのが現状です」と眉をひそめる。
 より低額のプランが見つかれば、解約して負担を軽減させたい。だが、新規に加入すると、保険を使えるまで一定期間待たなければならない。
「この年齢になると、いつ何が起こるか分からないので、保険に未加入の状態というのは怖い」と料金の改定に不安が募る。実際、最近健康診断を受けたら心臓に異常があると診断され、精密検査を受けた。「もし実費を払っていたら…」。
 四十代後半の日本人男性(管理職)は「子供の教育費と保険料を出すのに精一杯。夫婦共稼ぎでないと正直やっていけません」と話す。保険料が家計を締め付けているのが実状だ。義母(故人)宅で同居、住居費を支払う必要がなかったのが救いだった。「甘えてしまい、申し訳なく思っています」と悔いる。
 高齢化の進む現代社会では、医療保険はリスクが大きい。利益を維持するため、料金の引き上げにつながりやすいという。
 具志堅茂信援協診療部部長は「年金生活者なら、子供に援助してもらわなければならない額です。もし、子供が失業して収入が無くなったら、大変なことになります」と深刻に受けている。